福岡地方裁判所 昭和46年(行ウ)35号 判決 1985年12月26日
原告ら
古賀藤久
ほか一四四五四名
坪根侔
ほか五六四〇名
原告ら訴訟代理人
立木豊地
谷川宮太郎
高橋清一
林健一郎
吉田雄策
佐伯静治
尾山宏
斉藤鳩彦
古原進
森川金寿
新井章
雪入益見
芦田浩志
北野昭武
重松蕃
戸田謙
柳沼八郎
橋本敦
深田和之
原告ら訴訟復代理人
石井将
被告
福岡県教育委員会
代表者委員長
兼尾雅人
被告
福岡市教育委員会
代表者委員長
白木勘治
被告ら両名訴訟代理人
植田夏樹
堀家嘉郎
俵正市
秋山昭八
被告ら両名指定代理人
森脇勝
大串法光
主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第一 当事者の求めた裁判
一 原告ら
(一) 被告福岡県教育委員会が原告らに対してなした別紙第一の一、二の原告及び処分目録「処分」欄記載の各懲戒処分(処分日は別紙第二の処分日目録記載のとおり)を取り消す。
(二) 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 被告ら
主文同旨
第二 当事者の主張
一請求原因
(一) 別紙第一の一の原告及び処分目録記載の原告らは、昭和四三年一〇月八日、昭和四四年七月一〇日、同年一一月一三日、昭和四六年五月二〇日、同年七月一五日当時、いずれも同目録「勤務校及び職名」欄の各項に対応する各学校の各地位にあつた地方公務員で、福岡県教職員組合(以下「福教組」という。)の組合員であつた。
別紙第一の二の原告及び処分目録記載の原告らは、昭和四二年一〇月二六日、昭和四三年一〇月八日、昭和四四年七月一〇日、同年一一月一三日、昭和四六年五月二〇日、同年七月一五日当時、いずれも同目録「勤務校及び職名」欄の各項に対応する各学校の各地位にあつた地方公務員で、そのうち別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「42.10.26」とある項に記載のある原告らを除くその余の原告らは福岡県高等学校教職員組合(以下「福高教組」という。)の組合員であつた。
(二) 被告福岡県教育委員会(以下「被告県教委」という。)は、本件各闘争当時別紙第一の一、二の原告及び処分目録記載の原告らの任命権者であつたが、そのうち別紙第三の市教委関係原告目録記載の原告らについては、被告福岡市教育委員会(以下「被告市教委」という。)がその後任命権者となつたが、その経緯は次のとおりである。
すなわち、福岡市は、昭和四七年四月一日、地方自治法二五二条の一九第一項の指定都市となつたため、被告市教委は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五八条により同市の設置する学校の県費負担教職員である原告ら(前掲市教委関係原告目録記載一の原告ら)の任免、懲戒などに関する事務を行うこととなり、更に、粕屋郡志賀町が昭和四六年四月五日、早良郡早良町が昭和五〇年三月一日に福岡市に編入されたため、被告市教委は、右法条により右各町が設置していた学校の県費負担教職員であつた原告ら(前掲市教委関係原告目録記載二、三の原告ら)の任免、懲戒などに関する事務を行うこととなつた。
(三) 被告県教委は、原告らに対し別紙第一の一、二の原告及び処分目録「処分」欄記載の各懲戒処分(以下「本件各処分」という。)を別紙第二の処分日目録記載の各日になし、各発令日のころ、原告らに告知した。
(四) しかし、本件各処分は正当な理由がなくなされた違法な処分であるから、その取消しを求める。
二請求原因に対する被告らの答弁
請求原因(一)ないし(三)の各事実は認めるが、同(四)の主張は争う。
三被告らの主張
(一) 昭和四二年一〇月二六日における争議行為(以下「一〇・二六闘争」という。)についての処分理由
1 一〇・二六闘争における組合側の取り組み
日本教職員組合(以下(日教組」という。)は、昭和四二年九月二七、二八日の両日に第三三回臨時大会を開催し、公務員共闘会議(以下「公務員共闘」という。)の統一実力行使の一環として、公務員給与改定の実施時期を人事院勧告どおり五月一日とし、その必要財源は国で完全に措置することなどの要求を掲げ、一〇月二六日全組合員をして組織的に出勤時から最低一時間の休暇をとらせ要求貫徹集会を実施させることを決定した。そして、一〇月一三日に開催された全国戦術会議において、福岡県を含む三四都道府県の教職員組合に対し実力行使突入の指令を発することにし、四県の教職員組合に対し実力行使突入の態勢を整備させることを決定した。
福高教組は、前記日教組臨時大会直後の一〇月六日、各支部単位に集会を開催し、右統一実力行使の実施に関し、同大会の決定事項を確認するとともに、組合員による最終的な大会決定批准のための全員投票を行つたが、その賛成者は組合員五九三九人中四九八四人(賛成率八三・九パーセント)であつた。福高教組は、一〇月一三日に宮之原中央執行委員長名による一〇・二六統一実力行使への突入指令を受け、一〇月二四日に戦術委員会を開催して最終的な意思統一を終えて実力行使突入態勢を整えた。
福高教組は一〇月二六日、各分会においてほぼ全組合員が日教組の指令どおり実力行使に突入し、各支部において福教組とも共闘を組んで要求貫徹集会を開催した。
2 当局側の対応
総理府総務長官は、昭和四二年一〇月六日、公務員共闘の企図した一〇・二六闘争について同議長あて「公務員は、いかなる場合においても争議行為等をしてはならないものであり、政府は、公務員共闘並びにその傘下の関係職員団体及び関係職員に対し、全体の奉仕者としての自覚と反省を促し、違法な行動に出ることのないよう強く自重を求めるとともに、万一違法な事態が生じた場合には、法の規定にてらし厳正な態度をもつて臨むものである。」旨の警告を発した。
文部省は、一〇月九日、初等中等教育局長名で全国各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて前記警告を添付した通達を発し、管下教職員の服務の指導に万全を期するとともに、非違を犯すものについては厳正な措置をとるよう指導した。
被告県教委は、一〇月一七日、右文部省通達の周知徹底を図るため、教育長名で各市町村教育委員会教育長及び各県立学校長あて同通達を添付した同趣旨の通達を発し、更に、一〇月二一日、教育長名で各市町村教育委員会教育長及び各県立学校長あて通達を発して前記通達の趣旨を重ねて徹底させるとともに、特に県立学校の教頭、定時制主事及び通信制主事については、一〇月二六日のスト当日は在校して校長の職務を助け、所属教職員の違法行為を確実に把握するよう命じた。
3 原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「42.10.26」とある項に記載のある原告らは、当時教頭又は定時制主事の地位にあつて校長を助け教職員を指導すべき職責を有するとともに、管理職員等の範囲を定める規則(昭和四一・九・一三福岡県人事委員会規則第一四号)二条二項により地方公務員法(以下「地公法」という。)五二条三項ただし書にいう「管理職員等」に指定されて登録職員団体である福高教組の組合員となることができなかつたにもかかわらず、昭和四二年一〇月二六日、校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間職場を離脱して、福高教組の実施した争議行為に参加した。
(二) 昭和四三年一〇月八日における争議行為(以下「一〇・八闘争」という。)についての処分理由
1 一〇・八闘争における組合側の取り組み
日教組は、昭和四三年九月一八、一九日の両日に第三五回臨時大会を開催し、公務員共闘の統一実力行使の一環として、公務員給与改定の実施時期を人事院勧告のとおり五月一日とすること、その必要財源は国で完全に措置すること、超勤手当制度を確立することなどの諸要求を掲げ、一〇月八日全組合員をして組織的に早朝勤務時間一時間の休暇をとらせ、要求貫徹集会を実施させることを決定した。そして、一〇月一日に開催された日教組全国戦術会議において、福岡県を含む三〇都道府県の教職員組合に対し実力行使突入の指令を発することを確認した。
福教組は、日教組第三五回臨時大会で決定された一〇・八統一実力行使の戦術を含む秋期年末闘争方針に基づき、その批准のための組合員の全員投票を九月二一日から二七日にかけて実施し、組合員数二万〇五一〇人中賛成一万四四五一人(賛成率七〇・四六パーセント)の結果を得た。そして、一〇月八日組合員総数の九二パーセントに当たる一万八二九六人が指令どおり統一実力行使に参加した。
福高教組は、前記日教組第三五回臨時大会の決定に基づき、九月二五日に郡市支部単位の全員集会を開いて一〇・八統一実力行使戦術についての批准投票を行い組合員数五九七三人中賛成四二五六人(賛成率七一・二パーセント)の結果を得た。そして、一〇月八日組合員総数の九五・六パーセントに当たる五〇二六人が指令どおり統一実力行使に参加した。
2 当局側の対応
文部大臣は、昭和四三年九月二〇日、日教組の一〇・八闘争計画につき、教職員が日教組の誤つた指導に同調して、児童・生徒を学校に託した父母及び国民の信頼を裏切るような行動に走ることのないよう切望する旨の談話を発表した。
被告県教委は、九月二五日、教育長名で県下各市町村教育委員会教育長及び各県立学校長あて前記文部大臣談話を添付した指導通達を発し、「地方公務員である教職員が行う一斉休暇闘争は、その目的のいかんを問わず、地方公務員法三七条で禁止されている争議行為に当たり、教職員がこれに参加することは、その職責からして、次代の国民の育成を託した父母をはじめ県民の信頼を大きく裏切るものであるから、教職員がかかる違法行為に走ることがないよう指導を徹底するとともに、スト参加者に対しては厳正なる措置をとる所存である。」旨を伝えるとともに、管下教職員の服務の指導の徹底及び違反者に対する厳正な態度を強く要請し、また、九月三〇日、県立学校長会を開催し、一〇・八闘争に対して的確な措置をとるよう重ねて指導した。更に、被告県教委は、一〇月七日、教育長名の書面をもつて福教組及び福高教組の各執行委員長に対し、「貴組合は、人事院勧告の完全実施等を要求して、きたる一〇月八日に早朝一時間程度の一斉休暇闘争を企図しているやに聞いています。いうまでもなく、その目的のいかんを問わず一斉休暇闘争は、地方公務員法三七条で禁止されている争議行為であります。県教育委員会としては、貴組合がかりそめにもかかる違法な行為に走ることのないよう厳に自重自戒されることを強く警告します。」との警告を行つた。
3 原告らの違法行為
(1) 福教組関係
ア 本部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告古賀らは、昭和四三年五月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第九次賃金闘争方針に基づき、閣議決定期(一〇月ころを目途)に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 原告古賀らは、五月二五日から二七日まで開催された第三一回福教組定期大会において、右方針に従い右争議行為を行う旨の議案を提出し、これを可決成立せしめた。
(ウ) 原告古賀藤久は、五月二九日、七月一三日及び八月一九日に開催された日教組全国戦術会議において決定された「賃金闘争の具体的構想」と題する三次にわたる職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(エ) 原告古賀らは、九月一三日開催された福教組本部執行委員会に出席し、一〇月八日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することを再確認し、その具体的戦術を討議、決定のうえ、右九月一三日開催された支部長会において、各支部長に対し、指示第二二号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
① 各支部は、九月二〇日までに分闘長会を開催し、今次賃金闘争の意義と一〇・八闘争までの具体的行動についての意思統一を行つた後、直ちに分会会議を開き、指示事項の徹底を期し闘争態勢を強化すること。
② 組合側の行動の正当性を認めさせるため、九月二〇日から三〇日までの間、各支部は地教委及び出張所長との交渉を強化し、また、各分会は分会員全員による校長交渉を強化すること。
③ 各支部は、九月二一日から二七日までの間に実力行使目標及び一〇・八闘争についての賛否の全員投票を行い、その結果を九月二八日に福教組本部に報告すること。
④ 一〇月八日、公務員共闘統一実力行使として、全組合員は、勤務開始時刻から一時間の有給休暇届を学校ごとに一括して校長に提出したうえ、市町村単位に行われる要求貫徹集会に参加すること。突入指令は、一〇月一日の日教組第四回全国戦術会議の後、日教組委員長名をもつて指令すること。
(オ) 原告古賀らは、前記指示第二二号に従い九月二一日から二七日までの間各支部単位に行われた批准投票において、各支部から送付された批准投票用紙を福教組本部に集約のうえ開票し、その結果、賛成率が七〇・四六パーセントであつた旨を公表した。
(カ) 原告古賀らは、前記指示第二二号により指示した分闘長会及び分会会議並びに地教委及び出張所長との交渉の模様などについて支部長を通じて逐一福教組本部へ報告させ、県下全体のスト態勢の確立に努めた。
(キ) 原告古賀藤久は、一〇月一日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを、支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部書記次長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告大村らは、昭和四三年九月一三日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第二二号について討議し、一〇・八闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(イ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月一四日から二〇日までの間に各支部において分闘長会を開催し、各分闘長に対して一〇・八闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第二二号の趣旨を徹底させるように指示した。
(ウ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二〇日から三〇日までの間、各支部ごとに組合員多数を動員して地教委及び県教育庁出張所長に対する集団交渉を行い、次のような要求事項について文書による回答を求めるなどして、各支部のスト態勢の確立に努め、一〇月二日、右交渉の結果を右本部に報告した。
① 政府に対し、組合側の要求の正当性を認め、人事院勧告の完全実施(五月実施)及び地方公務員給与改訂財源の国家による保障並びに超勤手当制度の実施をするよう要求した打電をすること。
② 組合側の要求を政府が認めない場合に発動する一〇・八統一実力行使は正当なものであり、したがつて業務命令による弾圧を行わないこと。
(エ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二〇日から三〇日までの間、管下各分会に対し、分闘長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、地教委及び県教育庁出張所長に対すると同様の要求事項について分会員全員の署名捺印のある要求書を校長に対して提出させ、文書による回答を強要させるなどして、各分会のスト態勢の確立に努め、一〇月二日、各分闘長をしてその交渉の結果を支部長あて報告させた。
(オ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二一日から二七日までの間に各支部ごとに管下組合員の全員集会を開き、一〇・八闘争の批准投票を行わしめ、九月二八日、投票用紙を右本部に提出した。
(カ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月四日までに各支部ごとに管下各分会の始業時刻、授業終了時刻及び退庁時刻を掌握したうえ、一〇月八日当日の要求貫徹集会の実施計画を樹立し、一〇月五日に分闘長会を招集して当該実施計画を各分闘長に指示するとともに、一〇月七日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底せしめること及び同日分会員全員の前記休暇届をとりまとめて退校時に一括して校長に提出することを指示した。
(キ) 原告今村らは、一〇月八日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させ脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「43.10.8」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四三年一〇月八日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間職場を離脱して、争議行為に参加した。
(2) 福高教組関係
ア 本部役員であつた原告中村羔士の違法行為
原告中村羔士は、一〇・八闘争当時、福高教組本部執行委員の地位にあつて、福高教組本部執行委員会の構成員で、かつ、特殊学校部の部長として県評議員会の構成員でもあつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 右原告は、昭和四三年五月上旬ころ開催された福高教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第九次賃金闘争方針に基づき、閣議決定期(一〇月ころを目途)に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 右原告は、五月三〇、三一日の両日開催された第二五回福高教組定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出し、これを可決成立せしめた。
(ウ) 右原告は、九月一八日開催された福高教組本部執行委員会に出席し、一〇・八闘争の批准投票を九月二五日に行うこと及びその具体的方法について決定した。
(エ) 右原告は、他の福高教組役員とともに、九月二七日、福高教組本部において右批准投票の開票を行い、賛成率が七一・二パーセントであることを公表した。
(オ) 右原告は、一〇月二日開催された中央闘争委員会に出席し、一〇・八闘争を実行することを再確認し、その具体的戦術を討議決定のうえ、右一〇月三日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第二三号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
① 一〇・八闘争を成功させるため、一〇月四日に分会会議を開き意思統一を図つたうえ、会議終了後に全員による校長交渉をもち、校長に対して闘いの正当性を認めさせ、不当な干渉、妨害をしない旨の確約書をとること。
② 一〇月八日、公務員共闘統一行動として全組合員は勤務開始時刻から一時間の有給休暇届を学校ごとに一括して校長に提出のうえ、支部単位の要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は早朝の要求貫徹集会に参加し、当日の勤務終了時刻前一時間の有給休暇届を提出すること。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の二の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告小路ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告平尾ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告小路らは、昭和四三年九月二五日、福高教組本部の指示により、郡、市、支部単位の全員集会を開き、一〇・八闘争の批准投票を行わしめ、翌二六日、当該投票用紙を各支部ごとにとりまとめて右本部に提出した。
(イ) 原告平尾らは、一〇月二日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された前記指示第二三号について討議し、一〇・八闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(ウ) 原告小路らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月四日、分会長に対し各支部ごとに分会会議を開き、前記指示第二三号の趣旨を徹底させるよう指示した。
(エ) 原告小路らは、そのころ、各分会長に対し、各分会において全員による校長交渉を行い、組合においてあらかじめ作成した要求決議書に全分会員連署のうえ、これを校長に提出し、次のような事項につき校長に文書による確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
① 政府七人委員会、被告県教委、知事、人事委員会に対し、組合の要求を実現するよう打電する。
② 組合の正当な闘いに対し、次のような不当な干渉、妨害をしない。
組合の闘いについての事前、事後の一切の調査については報告しない。
官憲、地域ボスの不当な介入を絶対に阻止する。
組合の闘いに職務命令を出さない。
(オ) 原告小路らは、福高教組本部の指示に従い、分会長に対し、一〇月四日に全分会員の休暇届をとりまとめ、一〇月七日の終業時刻に校長に一括して提出するよう指示した。
(カ) 原告小路らは、一〇月八日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従等を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「43.10.8」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の二の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に組合専従若しくは停職中と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四三年一〇月八日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね一時間職場を離脱して、争議行為に参加した。
(三) 昭和四四年七月一〇日における争議行為(以下「七・一〇闘争」という。)についての処分理由
1 七・一〇闘争における組合側の取り組み
日教組は、昭和四四年六月一六日から二〇日まで五日間にわたり第三六回定期大会を開催し、公務員共闘の統一実力行使の一環として、大幅賃上げと人事院勧告の完全実施に決着をつけ本格的な賃金闘争を切り開くため人事院勧告前の闘いを重視し、七月一〇日に早朝勤務時間三〇分カットの実力行使を行う旨を決定し、六月二七日、指令第一号をもつて「七月一〇日、全組合員(徳島、香川、愛媛、栃木の四県を除く。)は早朝三〇分カットによる原則として市町村単位の抗議要求貫徹集会を組織し展開せよ。」とのストライキ指令を全国に発した。
福教組は、五月二七、二八日の両日に第三三回定期大会を開催し、公務員共闘の統一要求、日教組の独自要求、賃金闘争に関する職場討議案などを中心に組合員の職場討議、学習活動を組織し、七・一〇実力行使に向けて組合員の意思を結集した。そして、七月一〇日組合員総数の九五・五パーセントに当たる一万八六五九人が指令どおり統一実力行使に参加した。
福高教組は、五月三〇、三一日の両日に第二六回定期大会を開催し、公務員共闘の統一要求、日教組の独自要求、賃金闘争に関する職場討議案などを中心に組合員の職場討議、学習活動を組織し、七・一〇統一実力行使に向けて組合員の意思を結集するとともに、六月二五日の評議員会において、七・一〇ストライキの意義につき「大幅賃上げと人事院勧告の実施時期の完全実施に決着をつけ統一要求にそつた有利な勧告を出させるための闘いで、一〇・二六闘争及び一〇・八闘争の発展としての闘いである旨を確認した。そして、七月一〇日組合員総数の九六・四パーセントに当たる五三三七人が指令どおり統一実力行使に参加した。
2 当局側の対応
文部省は、昭和四四年六月二五日、初等中等教育局長名で各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて通達を発し、日教組の七・一〇闘争の計画について「教職員の一部には、本年四月二日の都教組事件最高裁判決の趣旨を拡張解釈して本件ストライキを適法であると誤解しているものもあるようであるが、公立学校教職員の職務の公共性にかんがみ、本件ストライキは次代の国民の教育上に重大な障害をもたらすものとして禁止されている違法な争議行為に当たるばかりでなく、その目標の中には大学臨時措置法案及び学校教育法改正法案等の粉砕、沖縄返還、B52戦闘爆撃機撤去要求等の勤務条件でなく都道府県又は市町村の当局において処理し得ない事項を含んでおり、ストライキの違法性の程度の強いものである。」旨指導するとともに、管下教職員の服務の指導に万全を期し、非違を犯すものについては厳正な措置をとるよう要請した。
被告県教委は、七月二日、右文部省通達の周知徹底を図るため、教育長名で県下各市町村・学校組合教育委員会教育長及び各県立学校長あて同通達を添付した同趣旨の指導通達を発し、七月九日、教育長名をもつて福教組及び福高教組の各執行委員長に対し、「県教育委員会としては、昨年一〇月八日における一斉休暇闘争に参加した職員に対して、先般その責任を明らかにしたところでもあり、厳に自重自戒し、貴組合がかりそめにも重ねてかかる違法な行為に走ることがないよう」文書で警告した。
市町村立学校及び県立学校の各校長は、七月九日、被告の前記指導通達に従い、原告らを含む教職員各人に対し書面で「七月一〇日の全国統一行動参加のため職務を放棄することは違法行為であるので、在校のまま平素の業務に従事せよ。」との職務命令を発した。
3 原告らの違法行為
(1) 福教組関係
ア 本部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告古賀らは、昭和四四年三月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第一〇次賃金闘争方針第一次草案に基づき、人事院勧告の完全実施をめぐる闘争の重要時点に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 原告古賀らは、三月中旬ころ、右方針に従い、三月五日、六日に開催された日教組中央委員会において決定された右ストライキの時期を七月中旬の人事院勧告時期とする日教組中央委員会の三月五、六日付決定に係る「第一次職場討議案」を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(ウ) 原告古賀らは、五月二七日から二九日まで開催された福教組第三三回定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出し、これを可決成立せしめた。
(エ) 原告古賀らは、六月上旬ころ、「七・一〇全国統一実力行使について」と題する五月二九日付日教組第二次職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(オ) 原告古賀らは、六月二五日開催された福教組本部執行委員会に出席し、七月一〇日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することを再確認し、その具体的戦術を討議、決定のうえ、右六月二五日開催された支部長会において各支部長に対し、福教組発第四三号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
① 今次賃金闘争は、国会における大学臨時措置法案、学校教育法一部改正案、地方公務員定年制法案等の粉砕及び被告県教委の企図している学習指導要領伝達講習会の阻止等の目的と絡めて組まれるものであること。
② 各支部は、全組合員の意思統一を図つてストへの完全突入態勢を整えるとともに、当該地域におけるオルグ活動を展開すること。
③ 各分会は、分会員四名につき一枚の割合で闘争宣言文を墨書し、これを校区内の目抜きの場所に貼付すること。
④ 各支部は、全組合員の意思統一を図る目的をもつて、オルグ活動を強化し、その結果を七月五日までに福教組本部に報告すること。
⑤ 全組合員は、七月一〇日、前記の目的のもとに公務員共闘の全国統一ストライキとして勤務開始時刻から三〇分、市町村単位で開催される集会に参加すること。このため、七月九日、各分闘長は、全分会員の意思を集約し、これを校長に口頭で通告すること。
(カ) 原告古賀藤久は、六月二七日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち、「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告鳥越ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告鳥越らは、昭和四四年六月二五日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第四三号について討議し、七・一〇闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(イ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、六月二六日以降各支部において分闘長会を開催し、各分闘長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに六月三〇日までに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第四三号の趣旨を徹底させるよう指示した。
(ウ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分闘長に対し、七月二日から五日までの間に、当該地域に対するオルグ活動としてチラシを街頭宣伝及び戸別訪問により配布すること、闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で墨書させ、これを当該校区内の目抜きの場所に貼付することなどを指示し、もつて、各支部のスト態勢の確立に努めた。
(エ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、七月一〇日当日の集会の実施計画を樹立した後、管下各分闘長に対し、七月九日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び七・一〇統一ストライキは全分会員の集約的な意思の表明として決行されるものである旨を校長に対して口頭で通告することを指示した。
(オ) 原告今村らは、七月一〇日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.7.10」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四四年七月一〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(2) 福高教組関係
ア 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の二の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告黒田ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告松本ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告松本らは、昭和四四年七月三日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された同日付指示第一三号について討議し、七・一〇闘争の具体的戦術を協議、決定した。右指示第一三号の概要は、次のとおりである。
① 七・一〇闘争の目標は、第一に人事院高額勧告の要求、第二に国会における大学臨時措置法案及び学校教育法一部改正案等の粉砕、第三に沖縄の即時無条件全面返還の要求、第四に労働基本権の奪還、第五に反弾圧、亀井・吉久体制との対決、福岡県県立学校教育振興計画審議会(以下「県教審」という。)の設置反対とすること。
② 全組合員は、七月一〇日、勤務開始時刻から三〇分間市町村単位に組織される公務員共闘の抗議、要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は、早朝の要求貫徹集会に参加し、当日の勤務終了時刻前に三〇分間の職務放棄を行うこと。
(イ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、七月七日に分会会議を開いて全分会員に前記指示第一三号の趣旨を徹底させて意思統一を図つた後に全分会員連署による決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ウ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、七月九日各校長に対し「大幅賃上げ、反動諸法案粉砕のため日教組中央闘争委員長の指令により七月一〇日早朝三〇分のストライキに参加する。」との文書通告を行うとともに、各分会長に対し放課後分会員全員による校長交渉を行い、次のような事項について校長から確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
① 人事院に対する高額勧告の要求、政府及び衆参文教委員長に対する大学臨時措置法案反対、知事に対する県教審反対の打電をすること。
② 本件ストに関する報告書を提出しないこと。
(エ) 原告黒田らは、七月一〇日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において分会長名をもつて右(ウ)①記載内容と同様の打電を行うこと及び右(ウ)記載の確約を完了していない校長に対しては重ねて交渉を継続することを各分会長に指示した。
イ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務及び職名」欄の「44.7.10」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四四年七月一〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(四) 昭和四四年一一月一三日における争議行為(以下「一一・一三闘争」という。)についての処分理由
1 一一・一三闘争における組合側の取り組み
日教組は、昭和四四年九月二九、三〇日の両日第三七回臨時大会を開催し、人事院勧告の実施時期に決着をつけることを重点とする公務員共闘の四項目(①人事院勧告の五月一日実施をかちとる。②地方公務員、地方公営企業職員の賃上げ財源を確保させる。③最低賃上げ幅を四〇〇〇円とする。④期末手当を最低〇・二か月分とする。)にわたる統一実力行使の目標を実現するため一一月一三日に全組合員が早期勤務時間一時間三〇分カットによる、原則として市町村単位の要求貫徹集会を行うなどの戦術を最終的に決定した。その後、日教組は、一〇月六日、文部大臣に対し、公務員共闘の右重点四項目の要求と教職員の給与改善、超勤手当制度の要求を内容とする申入れを行い、一〇月二四日文部省初等中等局長からこれに対する回答を得たが、その内容に満足せず、一〇月二〇日の全国戦術会議において一一・一三統一実力行使についての批准投票を行い、その結果、最終的にスト突入県を確認し、一一月一一日の閣議決定の後、電報で全国にスト突入を指令した。
福教組は、前記日教組第三七回臨時大会での決定の批准について、一〇月一五日から一七日にかけて組合員の全員投票を実施したところ、組合員総数二万〇三〇一人中一万五一二二人の賛成者(賛成率七六パーセント)を得たので、一〇月二〇日開催された日教組全国戦術会議において一一・一三統一実力行使に突入するものと確認された。そして、一一月一三日組合員総数の九三・六四パーセントに当たる一万八二三三人が指令どおり統一実力行使に参加した。
福高教組は、前記日教組第三七回臨時大会の決定に基づき、一〇月一六日を中心として、支部単位の組合員集会を開いたうえ早朝一時間三〇分の時限ストライキを内容とする一一・一三全国統一実力行使戦術について全員投票を行い、六八・五パーセントの賛成を得たので、前記日教組全国戦術会議において一一・一三統一実力行使に突入するものと確認された。そして、一一月一三日組合員総数の九三パーセントに当たる五一七一人が指令どおり統一実力行使に参加した。
2 当局側の対応
文部省は、昭和四四年一〇月六日、初等中等教育局長名で日教組委員長に対し、同教組の一一・一三闘争計画について「教職員の職務の公共性にかんがみ、今回のストライキは、禁止されている争議行為に該当するばかりでなく、安保条約廃棄、沖縄無条件返還の要求と一体的に取り組まれる政治的な違法性の強い争議行為である。文部省としては、争議行為による公教育の停廃が、児童、生徒に与える教育的・心理的影響及び父母その他国民全体の利益にもたらす重大な障害にかんがみ、本件ストライキについては切に自重を望むとともに、かりに実施された場合には参加者に対し厳正な措置をとらざるを得ない。」趣旨のメモを手交して警告し、文部大臣は、一〇月二三日、右警告と同趣旨の談話を発表した。また、文部省は、右同日、初等中等教育局長名で各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて前記警告及び文部大臣談話を添付した通達を発して同趣旨の指導を行うとともに、「今回のストライキに当たつては、公立学校教職員に対して課せられている政治的行為の制限についても配慮すべき」旨指導した。
被告県教委は、右文部省通達の趣旨に従い、一一月四日、県下各市町村・学校組合教育委員会教育長及び各県立学校長に対し、同通達を添付した通達を発して一一・一三闘争に関する被告県教委としての同趣旨の指導をするとともに、「このような違法行為については、かねてから自重自戒を求めてきたばかりでなく、昭和四三年の一〇・八闘争参加者に対しては懲戒処分をもつて強く反省を求めたにもかかわらず、本年七・一〇闘争において本県が全国で最も多数の参加者を出したことはまことに遺憾であり、今回のストライキ参加者に対しては重大な決意をもつて厳正なる措置をとる所存である。」旨を述べて、所属職員の服務に対する事前の指導及び違反者に対する厳正な態度を強く要請し、右通達において特に県立学校長に対し「最近における高校生の政治活動がきわめて憂慮されている事態にかんがみ、本件のような政治的色彩の強いストライキが生徒に与える悪影響には、はかり知れないものがある。」旨を述べ、この面からも所属教職員に対する指導を徹底するよう要請した。また、被告県教委は、一一月一二日、教育長名の書面をもつて福教組及び福高教組の各委員長に対し、「人事院勧告は制度の趣旨からも完全実施さるべきものであり、県教育委員会としてもその実現のために種々努力を重ねてきたところでありますが、それを要求するためとはいえ、違法な手段に訴えることは地方公務員法上許さるべくもありません。特に今回企図されているストライキは同日計画されている安保条約廃棄及び沖縄無条件返還を要求する闘争と結合して行われようとしているものであり、政治的な目的を有する違法性の強い争議行為であると考えられます。当委員会としては、かかる違法行為に対しては、かねてから強くその自重自戒を求めてきたところであり、貴組合にあつてもこの趣旨を充分理解されているものと確信しますが、不幸にして本件ストライキが実施された場合には、重大な決意をもつて厳正な措置をとる所存であります。」旨を警告した。
市町村立学校及び県立学校の校長は、一一月一二日、被告県教委の前記指導通達に従い、原告らを含む教職員各人に対し書面で「一一月一三日のストライキに参加することは、違法行為であるので平常どおり職務に従事せよ。」との職務命令を発した。
3 原告らの違法行為
(1) 福教組関係
ア 本部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告古賀らは、昭和四四年三月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第一〇次賃金闘争方針第一次草案に基づき、一〇月あるいは一一月に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 原告古賀らは、五月二七日から二九日まで開催された第三三回福教組定期大会において右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出し、これを可決成立せしめた。
(ウ) 原告古賀らは、七月二五日及び九月一日、二日に開催された日教組全国戦術会議で決定された第三次及び第四次討議資料を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、ストライキ態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(エ) 原告古賀らは、一〇月三日開催された福教組本部執行委員会に出席し、一一月一三日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することを再確認し、その具体的戦術を討議、決定のうえ、右一〇月三日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第一六号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
① 今次闘争は、人事院勧告の完全実施、安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還及び被告県教委のなした一〇・八闘争参加者に対する処分の撤回等の各要求を目的とするものであること。
② 全組合員は、一一月一三日、公務員共闘の全国統一ストライキとして、当日の勤務開始時刻から一時間三〇分、市町村単位に行われる集会に参加すること。
③ 公務員共闘の賃金要求が解決した場合にも、安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還の各要求を掲げて、三〇分のストライキを行うこと。
④ 今次闘争を成功させるための前段の闘争として、一〇・八処分撤回闘争を組織的に展開し、被告県教委、同出張所、地教委及び校長に対する交渉を強力に推進すること。
(オ) 原告古賀らは、右(エ)④の方針に従い、被告県教委に対し九月二六日付処分撤回要求書を提出したのをかわきりに、九月中旬及び下旬の二次にわたり県下多数の組合員を動員して被告県教委の庁舎内に坐り込ませ、処分撤回を求める集団交渉を強要し、これらの処分撤回闘争を組織することにより、傘下組合員に対しストライキを理由とする処分の不当性及び本件闘争の正当性を宣伝し、もつて、本件のストライキ態勢の確立に努めた。
(カ) 原告古賀らは、一〇月一五日から一七日までの間、各支部単位に行われた批准投票において、各支部から送付された批准投票用紙を福教組本部に回収して開票し、その結果について賛成率七六パーセントであつた旨を公表した。
(キ) 原告古賀らは、「わたくしたちは、賃金要求を実現するため、一一月一三日勤務開始時から勤務時間一時間三〇分カットにより要求貫徹集会に参加するという日教組第三七回臨時大会の決定を守ります。なお、このたたかいは、全労働者の安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還の要求闘争と結合してたたかいます。」との決意表明書を作成し、各支部長を通じて各分会長に配布し、「権力や一部反動分子のスト切りくずし」に対する対策として各分会ごとに分会員全員をして署名捺印をさせるよう指示した。
(ク) 原告古賀藤久は、一一月一一日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち、「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告鳥越ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告鳥越らは、昭和四四年一〇月三日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第一六号について討議し、一一・一三闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(イ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月六日から一一日までの間に、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第一六号の趣旨を徹底させるよう指示した。
(ウ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月一一日以降、各支部、分会段階において一〇・八処分撤回闘争を組織的に展開し、傘下組合員に対しストライキを理由とする処分の不当性及び本件闘争の正当性を教宣し、次のような行動をして各支部のスト態勢の確立に努めた。
① 支部段階の闘争として、支部ごとに連日多数の組合員を動員して地教委及び県教育庁出張所長に対する集団交渉を要求し、「県教委に対し一〇・八処分を早急に撤回するよう具申すること」について文書による回答を一〇月二五日までの期限をつけて要求すること。
② 当該期限までに満足な回答をしない地教委及び出張所長に対しては、引き続き徹底した交渉を強化し、一一月にはいつてからは地教委、出張所長、指導主事の学校訪問を拒否する戦術その他当該支部独自の集団的な抗議行動を各々展開すること。
(エ) 原告今村らは、管下各分会に対し、分会長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、校長に対し次の要求事項について文書による回答を一〇月二五日までの期限をつけて強要させた。
① 被告県教委に対して、一〇・八闘争処分を早急に撤回するよう上申すること。
② 県人事委員会に対して、早急に一〇・八闘争に対する処分事案の一括口頭公開審理を開くよう要請すること。
更に、当該期限までに満足な回答をしない校長に対しては、引き続き交渉を強力に推し進め、一一月に入つてからは分会長を通じて分会員全員による無言闘争等の抗議行動を行わせた。
(オ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月一五日から一七日までの間に、各支部ごとに傘下組合員の全員集会を開催し、一一・一三闘争の批准投票を行わしめ、投票用紙を一〇月一七日に右本部に提出した。
(カ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二一日の勤務時間終了後、各支部ごとに、一一・一三スト宣言及び反安保、沖縄闘争のための全員集会を総評、公務員共闘の全国統一行動として地域公務員共闘と共同して開催し、右集会において参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図るとともに、被告県教委に対する一〇・八闘争処分撤回の要求をなすことを提案して全員の賛同を促し、被告県教委に対し同趣旨の電報を打ち、更に、集会終了後、組合員多数をひきいてデモ行進し、スト態勢の確立に努めた。
(キ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二一日から二五日にかけて、各支部ごとに傘下組合員をして一一・一三闘争に関する宣伝文書を街頭で配布させるとともに、闘争宣言文を各校区内の目抜きの場所に貼付させるなどして、スト態勢の確立に努めた。
(ク) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二五日から三〇日までの間に、各支部ごとに分会長会を開催し、各分会長に対し、各分会組織のスト態勢を点検し、前記ア(キ)の決意表明書に署名捺印させるよう指示して、スト態勢の整備に努めた。
(ケ) 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一一月一〇日以降各支部書記局に常駐体制をとり、一一月一二日、各地教委に対し文書によるスト通告を行うとともに、管下各分会長に対し分会会議を開催して全組合員に重ねてスト実施計画を徹底させたのち校長に文書でスト通告を行うよう指示した。
(コ) 原告今村らは、一一月一三日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.11.13」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四四年一一月一三日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(2) 福高教組関係
ア 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の二の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告黒田ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告松本ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告松本らは、昭和四四年一〇月一一日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された同日付指示第一九号について討議し、一一・一三闘争の具体的戦術を協議、決定した。右指示第一九号の概要は、次のとおりであつた。
① 人事院勧告の完全実施、沖縄の即時無条件全面返還、安保条約の廃棄及び労働基本権の奪還(ストライキの常設化)を目的として、一一月一三日に一時間三〇分のストライキを行うこと。
② スト当日までの前段階闘争として、日常的に一〇月下旬には「沖縄を教える運動」、一一月上旬には「安保条約反対、沖縄の即時無条件全面返還、非核武装宣言を要求する三〇〇〇万署名運動」に積極的に参加すること。
③ ストライキの正当性を確保するため、一〇・八闘争処分撤回要求闘争を被告県教委及び各校長に対して展開すること。
(イ) 原告黒田らは、一〇月一六日及び一七日、福高教組本部の指示により、各支部単位の全員集会を開いて一一・一三闘争の批准投票を行わしめ、一〇月一八日、当該投票用紙を各支部ごとにとりまとめて右本部に提出した。
(ウ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月中旬以降連日のように管下各分会に対し、分会長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、校長に対し次に述べるような要求事項について文書による確約を要求するよう指示して、各分会のスト態勢の確立に努めた。
① 被告県教委あてに一〇・八闘争処分撤回具申書を提出すること。
② スト当日に職務命令を出さないこと。
③ 当日のスト実施状況等についての報告書を提出しないこと。
(エ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月二一日の勤務時間終了後、各支部ごとに一一・一三スト宣言及び反安保、沖縄闘争のための全員集会を総評、公務員共闘の全国統一行動として開催し、参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図つた。
(オ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、組合員全員に対し、一〇月二〇日(月曜日)から二五日(土曜日)に至る一週間を「沖縄を教える週間」として、胸に安保廃棄、沖縄返還の文字を記載したプレートをつけ、住民に対し「安保条約反対、沖縄の即時無条件全面返還、非核武装宣言を要求する三〇〇〇万署名運動」を展開するよう指示し、もつて、生徒、父母及び一般住民に対して本件闘争の要求の正当性を宣伝して、その浸透を図るとともに全組合員の意思の高揚を図り、スト態勢の強化に努めた。
(カ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一一月四日、管下各分会長に対し、全分会員連署によるスト突入の決意表明書を作成すること及び脱落可能性のある組合員に対しては個別的説得を強化することを指示し、原告松本らは、管下各分会から集約した右決意表明書を一一月一一日の支部長会に持参して右本部に提出した。
(キ) 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一一月七日、管下各分会長に対し、分会員全員による校長交渉を行い、次に述べるような事項を要求するよう指示して、各分会におけるスト態勢の強化に努めた。
① 政府、知事、被告県教委に対し、人事院勧告の完全実施等の組合の要求を実現するよう打電すること。
② 次の事項について、誓約書を作成すること。
ストに対して介入しない、させない。
職務命令を出さない。
報告書を提出しない。
(ク) 原告黒田らは、一一月一三日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
イ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.11.13」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四四年一一月一三日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね一時間三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(五) 昭和四六年五月二〇日における争議行為(以下「五・二〇闘争」という。)についての処分理由
1 五・二〇闘争における組合側の取り組み
日教組は、昭和四六年三月五、六日の両日第八三回中央委員会を開催し、五月中旬に公務員共闘第一波統一ストライキ(全単産早朝三〇分の勤務時間カット)を計画し、国会闘争と相まつて政府の所得政策の粉砕、春闘の成果の反映、公務員労働者の要求実現を政府、人事院に迫り、情勢によつては日教組の超勤問題を絡ませて闘うなどの方針を決定した。そして、日教組は、右中央委員会の方針に基づき、政府が国会に提出していた「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法案」(以下「教職特別措置法案」という。)に対し、①一方的な超勤命令の排除、超勤業務とその限度は労使協定で、②超勤に対しては正当な割増賃金を、③四パーセントの教職調整額は測定困難な超勤に対するものとして支給という基本的修正案をもつて闘うこととし、社会党、日政連議員を中心に野党各派に働きかけ、衆議院において、社会、共産、公明各党の共同修正案にまとめあげ、この修正案が容れられない場合は法案の成立を阻止するため五月二〇日に早朝三〇分カットの統一ストライキに突入できるようその態勢を整えることを四月二八日の全国戦術会議において確認した。しかし、右修正案は容れられず、自民党は、全野党の反対を押し切つて、四月二八日の衆議院文教委員会で政府原案につき強行採決し、これを五月一一日の衆議院本会議で可決した。
日教組は、公務員共闘の統一要求、日教組独自の要求の実現及び教職特別措置法案につき日教組修正要求の実現、政府原案の粉砕を目標に、五月二〇日第一波統一ストライキとして早朝勤務時間三〇分カットのストライキを行つたが、このストライキには三四都道府県の教職員組合が参加した。
福教組は、三月二日、第二一八回評議員会を開催し、五・二〇統一実力行使についての前記日教組第八三回中央委員会の決定と同一内容の方針を決定した。そして五月二〇日組合員総数の八一・七パーセントに当たる一万四九二九人が指令どおり統一実力行使に参加した。
福高教組は、三月に開催された評議員会において、日教組第八三回中央委員会の前記決定の内容をそのまま福高教組の方針として決定し、更に、五月の評議員会においてこれを再確認した。そして五月二〇日組合員総数の八五・六パーセントに当たる四七四三人が指令どおり統一実力行使に参加した。
2 当局側の対応
被告県教委は、昭和四六年五月一三日、教育長名で県下各市町村・学校組合教育委員会教育長及び各県立学校長あて通達を発し、日教組の五・二〇闘争計画について、「公立学校教職員が児童・生徒、父兄等の信頼を裏切り、あえてこのような形で職務を放棄することは、その職務の公共性にかんがみ地方公務員法三七条によつて禁止されている違法な争議行為に該当するものである。」旨指導するとともに、管下教職員の服務の指導に万全を期するよう要請し、更に、五月一七日には、「当委員会としては、かりそめにも違法な行為に参加する教職員がある場合には従来の方針どおり厳正な措置をとる所存である。」旨重ねて通達した。
文部大臣は、五月一八日、日教組等の五・二〇ストに関して談話を発表し、当時参議院で審議中の教職特別措置法案の経緯について説明し、同法案が教職員の給与改善に大いに資するものであるにもかかわらず、日教組等が現に国会で審議中の法律案の成立を阻止することなどのため、あえて違法なストライキを行なおうとしていることに対して遺憾の意を表明した。
被告県教委は、五月一九日、教育長名の文書をもつて福教組及び福高教組の各執行委員長に対し、「教職員に対する県民の信頼を失うことがないよう厳に自重自戒され、かりそめにもかかる違法行為に走ることがないよう」強く警告した。
市町村立学校及び県立学校の校長は、五月一九日、被告県教委の前記指導通達に従い、原告らを含む教職員各人に対し書面をもつて「五月二〇日の教職員組合のストライキに参加するため勤務時間中に職務を放棄することは違法行為であるので、平常どおり職務に従事せよ。」との職務命令を発した。
3 原告らの違法行為
(1) 福教組関係
ア 本部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告古賀らは、昭和四六年二月下旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、日教組が「(公務員共闘)七一年賃金闘争」の一環として、教職特別措置法案の成立阻止などを目的として五月中旬に企図している早朝三〇分の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 原告古賀らは、三月二日開催された第二一八回評議員会において、右方針に従い、争議行為を行う旨の議案を提出し、これを可決成立せしめた。
(ウ) 原告古賀らは、右方針に従い、教職特別措置法案に関する日教組第四次職場討議資料及び日教組教育新聞号外を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(エ) 原告古賀らは、五月六日に開催された福教組本部執行委員会に出席し、五・二〇闘争の具体的戦術を討議、決定のうえ、同日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第三八号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
① 本件闘争は、今国会に提出されているいわゆる教職特別措置法案の成立を阻止することなどを目的として、「大幅賃上げ」等を要求する公務員共闘の全国統一ストライキと呼応して組まれるものであること。
② 全組合員は、五月二〇日、日教組指令に基づき早朝三〇分の勤務時間カットにより行われる集会に参加すること。
(オ) 原告古賀藤久は、五月一九日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に、「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち、「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告金丸ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような違法行為をした。
(ア) 原告金丸らは、昭和四六年五月六日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部から提示された前記指示第三八号について討議し、五・二〇闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(イ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、五月七日以降、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、直ちに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第三八号の趣旨を徹底させるように指示した。
(ウ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分会長に対し、父母及び一般大衆に対する宣伝活動として、右本部が準備する情宣チラシを各分会において計画的に配付すること及び闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で作成し当該校区内の目抜きの場所に掲示することなどを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
(エ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、五月二〇日当日の集会の実施計画を樹立したのち、管下各分会長に対し、五月一九日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び五・二〇統一ストライキは全分会員の集約的意思の表明として決行されるものである旨校長に対して口頭で通告することを指示した。
(オ) 原告大村らは、五月二〇日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.5.20」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四六年五月二〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(2) 福高教組関係
ア 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の二の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告北川ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告吉武ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告吉武らは、昭和四六年五月七日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された「五月闘争の推進について」と題する同日付指示第一号について討議し、五・二〇闘争の具体的戦術を協議、決定した。右指示第一号の概要は、次のとおりであつた。
① 教職特別措置法案は、「教職調整額」の支給とひきかえに「無定量勤務の強要」を意図するものであり、本件闘争は、かかる「悪法粉砕」などを目的として公務員共闘の全国統一ストライキと呼応して組まれるものであること。
② 「労働者があるところに団結があり労働者があるところにストライキがあり」、スト権確立への道は「当該労働者のストライキのつみかさね」にあること。
③ 「亀井県政第二期に対する闘いは、まず当面する五・二〇ストを整然と打ち抜くことをはじめとして組織の団結力を示すことから開始」するものであること。
④ 右方針に基づき、支部長・分会長は、五・二〇スト突入態勢を確立すること。
(イ) 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、分会会議を開き全分会会員に前記指示第一号の趣旨を徹底させて意思統一を図つたのち、五月一七日に全分会員連署によるスト突入決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ウ) 原告北川らは、五月二〇日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置し各組合員のスト参加状況を点検させて脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において次のことを決議し、それぞれに要求打電を行うよう各分会長に指示した。
① 人事院総裁及び文部大臣に対し、法案の不当性を追及する抗議と、超勤手当制度確立及び四月一日より大幅賃上げの要求をすること。
② 国会議員(与野党文教委員)に対し、無定量勤務を強要する法案内容を修正し、超勤手当制度を確立する要請をすること。
イ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.5.20」とある項に記載のある原告らは、いずれも同年五月二〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(六) 昭和四六年七月一五日における争議行為(以下「七・一五闘争」という。)についての処分理由
1 七・一五闘争における組合側の取り組み
日教組は、昭和四六年六月二日第八四回臨時中央委員会を開催し、同年度の賃金闘争をめぐる今後の方針につき、①公務員共闘の統一要求及び日教組の独自要求を実現するため、六月から七月にかけて公務員共闘及び日教組独自の「中央動員」を配置し、政府、人事院との交渉を強化する、②七月一五日、公務員共闘として全国統一ストライキ突入の態勢を構え、これを背景として政府、人事院に対し、最終回答を要求する、③東京、大阪、京都など、客観的条件の有利な地域で日教組中央執行委員会が指定する都道府県教組においては、早朝一時間カットの統一ストライキ、その他の地域の教組においては早朝勤務時間三〇分カットの統一ストライキの態勢を整えることなどを決定した。そして、七月五日の全国戦術会議における確認を経て日教組本部の指令に基づき、東京、京都、大阪、大学の各教組において早朝一時間の、福岡を含むその余の地域の県教組等において早朝三〇分の統一ストライキが行われた。
福教組は、七月三日から五日までの間に開催された第三五回定期大会において、「一九七一年度賃金闘争において、公務員共闘の統一要求、日教組の独自要求のため人事院勧告前に人事院、政府に対する統一ストライキをもつてたたかい、その重点を基本賃金の大幅引き上げと賃金体系の是正及び四月一日実施に置き、七月中旬の統一ストライキには積極的に参加する。」旨の決定を行つた。そして、七月一五日組合員総数の八八・一パーセントに当たる一万六三七三人が指令どおり統一実力行使に参加した。
福高教組は、七月二日、三日の両日開催された第二八回定期大会において、「大幅賃金引き上げを中心とする生活を守る闘い」として、「労働条件改善と権利拡大、スト権奪還の闘いと結合して大規模な統一ストライキを組織することをめざし、当面、五・二〇統一ストライキを前段闘争とする七・一五統一ストライキに最重点をおいて闘い、公務員共闘統一要求の獲得と日教組独自要求の実現のため、政府、人事院、国会に対する闘いを日教組、公務員共闘とともに強力に推進する。」との方針を決定した。そして七月一五日組合員総数の八四・九パーセントに当たる四六八一人が指令どおり統一実力行使に参加した。
2 当局側の対応
文部省は、昭和四六年七月七日、初等中等教育局長名で各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて通達を発し、日教組の七・一五闘争の計画について、教職員がかかる違法行為を行うことによつて、学校教育の正常な運営を妨げることがないよう十分指導するとともに、当日の服務の実態把握を的確に行い、あえて非違を犯すものについては厳正な措置をとるよう要請した。
被告県教委は、七月八日、教育長名で県下各市町村・学校組合教育委員会教育長及び各県立学校長あて右と同趣旨の指導通達を発するとともに、七月一〇日、右文部省通達の写しを送付した。更に、被告県教委は、七月一四日、教育長名をもつて福教組及び福高教組の両執行委員長に対し、「教職に対する県民の信頼を失うことがないよう厳に自重自戒され、かりそめにもかかる違法行為に走ることがないよう」文書で強く警告した。
市町村立学校及び県立学校の各校長は、七月一四日、被告県教委の前記指導通達に従い、原告らに対し書面をもつて「七月一五日の教職員組合のストライキに参加するため勤務時間中に職務を放棄することは違法行為であるので、平常どおり職務に従事せよ。」との職務命令を発した。
3 原告らの違法行為
(1) 福教組関係
ア 本部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録「46.7.15」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、七・一五闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告古賀らは、昭和四五年一〇月ころから「労働基本権を確立し、人事院勧告体制を打ち破つて、ストライキを背景にした政府との団体交渉によつて賃金を決定する」ことが「七一年賃金闘争」の課題である旨の日教組第一次職場討議資料を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付しスト態勢の準備に努めるとともに、一一月中旬開催された福教組本部執行委員会に出席し、日教組が翌年七月中旬に企図している公務員共闘としての全国統一ストライキに積極的に参加する方針を決定した。
(イ) 原告古賀らは、右方針に従い、「七一年賃金闘争」の山場を昭和四六年七月中旬に予定する公務員共闘としての全国統一ストライキにおくことについての日教組第二次及び第三次職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
(ウ) 原告古賀らは、三月二日開催された第二一八回評議員会及び七月三日から五日まで開催された福教組第三五回定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出し、これをそれぞれ可決成立せしめた。
(エ) 原告古賀らは、五月二二日及び七月七日開催された福教組本部執行委員会に出席し、七月一五日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することを再確認し、その具体的戦術を討議、決定のうえ、七月七日開催された支部長会に出席した支部長に対し、同日付指示第一号をもつて次のとおり指示した。
① 本件闘争は、五・二〇ストの発展として、公務員共闘の第二波統一ストライキとして組織され、これを背景とする対政府・人事院交渉によつて賃金大幅引き上げ等の要求の実現を図ることを目的とするものであること。
② 全組合員は、七月一五日、右目的の下に公務員共闘の全国統一ストライキとして勤務開始時刻から三〇分市町村単位に行われる要求貫徹集会に参加すること。
(オ) 原告古賀藤久は、七月一四日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
イ 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に、「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は、七・一五当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち、「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告金丸ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告金丸らは、昭和四六年七月七日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第一号について討議し、七・一五闘争の具体的戦術を協議、決定した。
(イ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月八日以降、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して右闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、直ちに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第一号の趣旨を徹底させるように指示した。
(ウ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分会長に対し、父母、一般大衆に対する宣伝活動として、情宣チラシを各分会において計画的に配布すること及び闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で作成し当該校区内の目抜きの場所に掲示することなどを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
(エ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月一二日の勤務時間終了後、各支部ごとに全員集会を公務員共闘の全国統一行動として開催し、意思の結集を図つた。
(オ) 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月一五日当日の集会の実施計画を樹立したのち、管下各分会長に対し、七月一四日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び七・一五統一ストライキは全分会員の集約的意思の表明として決行されるものである旨を校長に対して口頭で通告することを指示した。
(カ) 原告大村らは、七月一五日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
ウ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.7.15」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四六年七月一五日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(2) 福高教組関係
ア 支部役員であつた原告らの違法行為
別紙第四の二の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告北川ら」という。)は、七・一五闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告吉武ら」という。)は、支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をした。
(ア) 原告吉武らは、昭和四六年七月九日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された「七・一五統一ストライキについて」と題する同日付指示第一三号について討議し、七・一五闘争の具体的戦術を協議、決定した。右指示第一三号の概要は、次のとおりであつた。
① 本件闘争は、「七〇年代の本格賃金闘争」の一つの「ステップ」として人事院・政府に対し「団交」とストライキをもつて賃上げをかちとろうとする闘いであること。このことは中教審路線に基づく「五段階給与」のねらいをうち破つていく闘いにもなること。
② 「私たち教育労働者は、団結権はもとよりのこと、団交権もスト権ももつている」こと。
③ 七月一五日、全組合員は勤務開始時刻から三〇分、市町村単位に行われる公務員共闘の要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は、勤務終了時刻前に三〇分の職務放棄を行うこと。
(イ) 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、分会会議を開き全分会員に前記指示第一三号の趣旨を徹底させて意思統一を図つたのち、七月一二日に全分会員連署による決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ウ) 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、七月一二日の勤務時間終了後、各支部ごとに全員集会を公務員共闘の全国統一行動として開催し、参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図つた。
(エ) 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、当該地域に対する教宣活動として、闘争宣言文を各分会員につき三枚の割合で街頭に掲示することを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
(オ) 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、七月一二日、各校長に対し「大幅賃上げを要求して、七月一五日に三〇分未満のストライキを行う。」との文書通告を行うとともに、各分会長に対し放課後分会員全員による校長交渉を行い、次のような事項について校長から確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
① 七月一五日のストライキの正当性を認めること。
② ストライキに対する不当な介入、干渉をしないこと。
(カ) 原告北川らは、七月一五日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させて脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において分会長名をもつて給与担当大臣等へあてて「大幅賃金引上げ」等の打電を行うこと及び前項記載の確約を完了していない校長に対しては重ねて交渉を継続することを各分会長に指示した。
イ 組合専従を除くその余の原告らの違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.7.15」とある項に記載のある原告らは、いずれも同年七月一五日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加した。
(七) 原告らに対する本件各処分の根拠法条
原告らの前記各行為は、地公法三三条、三五条(ただし、組合専従及び停職中の原告らを除く。)、三七条一項に違反し、同法二九条一項一号、二号(ただし、組合専従及び停職中の原告らを除く。)、三号の懲戒事由に該当する。
よつて被告県教委は原告らに対し本件各処分をしたものである。
四被告らの主張に対する原告らの答弁
(一) 被告らの主張(一)及び同(二)ないし(六)の各1、2は認める。
(二) 同(二)3の(1)ウ、(2)ウ、同(三)3の(1)ウ、(2)イ、同(四)3の(1)ウ、(2)イ、同(五)3の(1)ウ、(2)イ、同(六)3の(1)ウ、(2)イは認める。
(三) 同(二)ないし(六)の各3のうち前項で認否した以外のその余の部分はすべて認める。ただし、原告らが本部執行委員会、大会、支部長会において争議行為を行う方針あるいはその具体的戦術を「可決成立せしめた」、「決定した」あるいは「確認した」などとする点については、いずれも、そうした方針、戦術を「可決成立し」、「決定し」あるいは「確認した」各機関会議にその構成員として出席していたとの意味に限定したうえで認めるものである。更に、(教育委員会等に)「押しかけ」とか(校長に)「強要する」とある部分は、それぞれ「行つた」、「要求した」との意味に理解して、これを認めるものである。
(四) 同(七)は争う。
五原告らの主張
(一) 地公法三七条一項は憲法二八条に違反する。
1 原告らに対する本件各処分の実質的根拠とされた地公法三七条一項は、地方公務員の争議権を全面一律に禁止しているが、右条項は公務員を含むすべての労働基本権を保障した憲法二八条に違反し無効であるから、同条項を適用して懲戒処分をすることは許されない。
ところで、最高裁判所は、昭和四八年四月二五日、昭和五一年五月二一日及び昭和五二年五月四日の各大法廷判決において、公務員の地位の特殊性と職務の公共性に基づき、争議行為の全面一律禁止は合憲である旨判示して、現在に至つているが、右各判決の判示しているところは以下述べるとおり論拠として脆弱であり、これに従うのは相当でない。
2 前記一連の最高裁判所の判決は、公務員の地位の特殊性と職務の公共性に基づき、争議行為の全面一律禁止は合憲である旨判示している。右のうち昭和五二年五月四日の判決では、憲法上、公務員の勤務条件についてはその詳細、細目に至るまですべて立法府において法律の形で決定すべきものとし、財政にかかる金銭的勤務条件についても、その詳細、細目に至るまで立法府の予算、法律の形で決定すべきものとする、勤務条件法定主義、財政民主主義についての硬直した理解を示し、他方、団体交渉権についても労使による勤務条件の共同決定権という偏狭な理解をしたうえで、このような団体交渉権は右勤務条件法定主義、財政民主主義と二律背反になるものとして団体交渉権をことごとく否定し、更に、争議権は右のような労使の共同決定権としての団体交渉権の一環であるから、これまた、勤務条件法定主義、財政民主主義と相容れないとして、憲法上の保障の外に追いやつてしまうという論理構造をなしている。しかしながら、公務員の勤務条件は、法律の定める基準に従つて定められれば足り(憲法七三条四号によると勤務条件基準法定主義をとつていることは明らかである。)、すべて法律による必要はなく、また、財政民主主義についても、公務員の給与、退職金などの金銭的勤務条件については、国の財政にかかるものとして、大綱において予算、法律の形式で国会の議決を経ることが要求されるに過ぎず、すべて細目に至るまで国会が定めなければならないものではないし、右の意味での勤務条件基準法定主義、財政民主主義の要請と矛盾しない形での団体交渉権のあり方が憲法上存在しうるのであるから、右判決が示した勤務条件法定主義、財政民主主義なるものは、到底、公務員の争議行為を全面一律に禁止することを合憲とする根拠となりえない。
次に、昭和四八年四月二五日の判決の示した「公務員の職務の公共性」についてであるが、地方公務員の職務の性質・内容は、多種多様であり、公共性の極めて強いものから、私企業のそれとほとんど変わらないものまであるところ、かかる職務の多様性や公共性の強弱を何ら顧慮することなく、単に「職務の公共性」ということですべての地方公務員の争議行為を全面一律に禁止することは不合理というべきであり、「職務の公共性」は地公法三七条一項を合憲とする根拠となりえない。
更に、公務員などの公共部門労働者の労使関係についての国際的動向も公務員について争議権を保障するか、斡旋、仲裁、調停などの手続を整備する方向に向つている。
3 また、前記一連の最高裁判所の判決は、公務員の争議行為を禁止することがやむをえない場合には、これに見合う代償措置の存在が不可欠である旨判示しており、特に昭和五一年五月二一日の判決は、地方公務員の場合には人事委員会又は公平委員会の制度が設けられており、制度上代償措置としての一般的要件を満たしている旨判示しているが、代償措置の一般的要件は、ILOの示す国際的基準に沿つて解釈されるべきものである。そして、ILOの基準によれば、代償措置の一般的要件としては、代償機関が公平であること、代償措置は調停・仲裁手続でなければならず、しかも右手続のあらゆる段階に当事者が参加できること、代償機関の裁定は両当事者を拘束し、完全・迅速に実施されなければならないことなどが必要であつて、地公法の定める人事委員会、公平委員会が右基準の設定する要件を満たしていないことは明らかであり、到底争議権剥奪に見合う代償措置たりうるものではない。
(二) 地公法三七条一項は憲法九八条二項に違反する。
わが国が昭和四〇年に批准したILO八七号条約は、昭和二三年の採択の際には、争議権とは関係がないという了解のもとに採択されたが、その後の結社の自由委員会、実情調査調停委員会、条約勧告適用専門家委員会の解釈によつて、今日では争議権と関連を持つ条約であるとする見解が確立されるに至つている。すなわち、ILOの右諸機関は、争議行為の一般的禁止は、同条約三条及び八条二項に違反するものとし、争議行為の禁止が許容されるのは、公権力の行使を担当する機関としての資格で行動する公務員及び不可欠な業務に従事する労働者に限られるものとする見解をとっており、また、その争議行為を禁止する場合には、その代償措置を講ずべきものとする見解をとつている。この見解は、ILOの条約の遵守を確保するための監視・統制機構がILO条約についての国際的に統一された解釈を示したもので極めて権威の高い公正な見解であること、そこには多年にわたる多数の見解の積み重ねを通じて判例法ともいうべきものが形成されており、いまや、ILOの確立した解釈となつていてそれ自体が国際労働法の法源の一つと認められるに至つていることからすれば、わが国内において、裁判所がILO八七号条約と地公法三七条との抵触関係を審査する場合、あるいはその前提として同条約の解釈を行う場合においても、ILOの右諸機関の解釈・判断を尊重し、これにそつた解釈・判断を行うべきである。そうだとすれば、地公法三七条は争議行為禁止の公務員の範囲を前記のとおり限定することなく、特に教職員を含めている点において、また、地公法の定める人事委員会、公平委員会の制度が争議行為禁止の代償措置たりえない点において、ILO八七号条約に違反しており、憲法九八条二項に違反した無効の規定であるといわなければならない。
(三) 地公法三七条一項が仮に合憲であるとしても、そのためには、同条項は憲法上特に禁止できる特定の公務員の特定の争議行為のみを対象としているのであり、それ以外の争議行為、すなわちその争議行為について何らの制限を許さないような職務の公務員の争議行為及びその争議行為について何らかの制限は許すが禁止することまでは許さないような職務の公務員の争議行為は禁止の対象としていないと限定的に解釈しなければならない。教職員は教育というその職務の特殊性から、争議行為のための職務の一時的中断による影響についても例えば授業の遅れは各教員による必要な調整により年間教育への影響はほとんどない状態にすることができ、また、日常の教育活動の実態に照らせばストライキによるその他の教育活動への支障はほとんどない。したがつて、教職員の争議行為は国民の生存権的利益や国民生活について重大な障害を招くものではなく禁止の対象となるものではないと解釈すべきである。
(四) 地公法三七条一項が合憲であるためには、地公法の定める人事委員会や公平委員会の制度等が地方公務員の争議行為を禁止するための代償措置として適正に整備されたものであることが前提となるのであるから、仮に公務員に対する争議行為の全面一律の禁止が制度的には合憲であるとの主張を前提としても当該代償措置が機能を喪失していたり、あるいは真に十分に機能していなかつたという異常な事態の下では、実質的には右代償措置制度の存在は争議行為を禁止する根拠とはなりえないというべきであるから、かかる事態の下でなされた争議行為に対し、地公法三七条一項を適用して不利益制裁を課すことは、憲法二八条との関連で適用違憲の問題を生じる。本件各争議行為時は昭和三五年から昭和四四年に至るまで一〇年間人事院勧告の実施時期が値切られており、代償措置が機能を喪失したか真に十分に機能していない状態にあつた(人事院勧告は国家公務員に向けられたものであるが、地方公務員の場合も現実的には人事院勧告に準じて実施されているから代償措置が機能しているかどうかは人事院勧告を政府が完全実施しているかどうかを論ずれば足りるものである。)。したがつてこのように人事院勧告が完全に実施されていない状況下において、その完全実施を求めて行われた本件各争議行為は、いわば前述のように代償措置が機能を喪失したか若しくは真に十分に機能していない法的状態のもとに行われた争議行為であるというべきであるから、これに対し地公法三七条一項を適用し、不利益制裁としての本件各処分を課すことは適用上憲法二八条に違反するものといわなければならない。
(五) 本件各処分は、懲戒権を濫用したものである。
地方公務員に対する懲戒処分は、公務員の義務違反に対して、その使用者である行政当局が、公務員法上の秩序を維持するため、使用者として行う制裁であるが、憲法二八条は原則として公務員にも適用されるのであるから、たとえ公務員に対する争議行為の禁止が合憲であるとしても、右禁止違反に課される制裁は労働基本権の人権性に照らし必要最少限度にとどめられるべきことは当然の要請といわなければならない。したがつて行政当局が禁止違反の争議行為に対し裁量権を行使して懲戒処分を行うに当つては、当該、争議行為の目的、手段、方法、結果、その及ぼす影響等、右争議行為をめぐる諸般の事情を考慮して、懲戒処分を必要最少限度の範囲にとどめるべきであつて(必要最少限度の原則)、裁量権の範囲を越えてなされた処分は、裁量権の濫用として違法を免れない。
本件各争議行為はいずれも人事院勧告の完全実施という正当な目的の下に公務員共闘の全国的な統一賃金闘争の一環として日教組がこれに参加する形で行われたものであるが、当時の教職員の賃金及び生活実態に照らしてその要求は最少限のものであり、極めて当然な要求であつた。また、本件各争議行為はその手段、態様においていずれも三〇分から一時間三〇分という短時間の職務放棄に止まり、授業に与える影響も少なく、更に、本件各争議行為は何らの事前接渉なく、いきなり争議行為に及んだというものではなく、日教組においても事前に再三再四、対政府・文部省・人事院交渉を行い、争議行為回避の努力を十分重ねたにもかかわらず、誠意ある回答が全く得られなかつたためやむなく行われたものである。
これに対して、本件各処分は、争議行為の時間の長短、結果、影響、参加者の参加態様などの諸事情を一切考慮することなく、すべての争議行為のすべての参加者に対して一律に機械的になされ、かつ、同一人に対し処分を重ねる毎に機械的に処分の程度を一ランクずつあげられて行くといういわば機械的な「累犯」加重方式がとられている。しかも本件各処分には必ず昇給延伸が伴つており、日教組その他の公務員労働組合の争議行為に対する他の処分状況と比べても、著しく苛酷な処分となつている。殊に本件各争議行為に関して、同じ福岡県の地方公務員である知事部局の職員については単純参加者が処分の対象とされておらず本件各処分はこれとの間に著しく権衡を失しており、これらの点から考えると本件各処分は専ら福教組、福高教組の組織破壊の意図をもつてなされたものというほかはない。以上諸般の事情を考慮すれば、本件各処分は、懲戒権の裁量の範囲を著しく逸脱、あるいはこれを濫用したものとして違法であるというべきである。
六原告らの主張に対する被告らの答弁
全部争う。
第三 証拠関係<省略>
理由
一請求原因(一)ないし(三)の各事実と被告らの主張(一)ないし(六)の各1の事実(本件各闘争における組合側の取り組み)、同各2の事実(当局側の対応)については当事者間に争いがない。
二原告らの違法行為について判断する。
(一) 一〇・二六闘争における違法行為
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「42.10.26」とある項に記載のある原告らは、当時教頭又は定時制主事の地位にあつて校長を助け教職員を指導すべき職責を有するとともに、管理職員等の範囲を定める規則(昭和四一・九・一三福岡県人事委員会規則第一四号)二条二項により地公法五二条三項ただし書にいう「管理職員等」に指定されて登録職員団体である福高教組の組合員となることができなかつたにもかかわらず、昭和四二年一〇月二六日、校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間職場を離脱して、福高教組の実施した争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(二) 一〇・八闘争における違法行為
1福教組関係
(1) 本部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告古賀らは、昭和四三年五月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第九次賃金闘争方針に基づき、閣議決定期(一〇月ころを目途)に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 原告古賀らは、五月二五日から二七日まで開催された第三一回福教組定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出したところ、右議案は、可決成立した。
ウ 原告古賀藤久は、五月二九日、七月一三日及び八月一九日に開催された日教組全国戦術会議において決定された「賃金闘争の具体的構想」と題する三次にわたる職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
エ 原告古賀らは、九月一三日開催された福教組本部執行委員会に出席し、一〇月八日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することの再確認及びその具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、更に、右九月一三日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第二二号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
(ア) 各支部は、九月二〇日までに分闘長会を開催し、今次賃金闘争の意義と一〇・八闘争までの具体的行動についての意思統一を行つた後、直ちに分会会議を開き、指示事項の徹底を期し闘争態勢を強化すること。
(イ) 組合側の行動の正当性を認めさせるため、九月二〇日から三〇日までの間、各支部は地教委及び出張所長との交渉を強化し、また、各分会は分会員全員による校長交渉を強化すること。
(ウ) 各支部は、九月二一日から二七日までの間に実力行使目標及び一〇・八闘争についての賛否の全員投票を行い、その結果を九月二八日に福教組本部に報告すること。
(エ) 一〇月八日、公務員共闘統一実力行使として、全組合員は、勤務開始時刻から一時間の有給休暇届を学校ごとに一括して校長に提出したうえ、市町村単位に行われる要求貫徹集会に参加すること。突入指令は、一〇月一日の日教組第四回全国戦術会議の後、日教組委員長名をもつて指令すること。
オ 原告古賀らは、前記指示第二二号に従い九月二一日から二七日までの間各支部単位に行われた批准投票において、各支部から送付された批准投票用紙を福教組本部に集約のうえ開票し、その結果、賛成率が七〇・四六パーセントであつた旨を公表した。
カ 原告古賀らは、前記指示第二二号により指示した分闘長会及び分会会議並びに地教委及び出張所長との交渉の模様などについて支部長を通じて逐一福教組本部へ報告させ、県下全体のスト態勢の確立に努めた。
キ 原告古賀藤久は、一〇月一日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを、支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部書記次長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告大村らは、昭和四三年九月一三日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第二二号について討議し、同会が一〇・八闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
イ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月一四日から二〇日までの間に各支部において分闘長会を開催し、各分闘長に対して一〇・八闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第二二号の趣旨を徹底させるよう指示した。
ウ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二〇日から三〇日までの間、各支部ごとに組合員多数を動員して地教委及び県教育庁出張所長に対する集団交渉を行い、次のような要求事項について文書による回答を求めるなどして、各支部のスト態勢の確立に努め、一〇月二日、右交渉の結果を右本部に報告した。
(ア) 政府に対し、組合側の要求の正当性を認め、人事院勧告の完全実施(五月実施)及び地方公務員給与改訂財源の国家による保障並びに超勤手当制度の実施をするよう要求した打電をすること。
(イ) 組合側の要求を政府が認めない場合に発動する一〇・八統一実力行使は正当なものであり、したがつて業務命令による弾圧を行わないこと。
エ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二〇日から三〇日までの間、管下各分会に対し、分闘長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、地教委及び県教育庁出張所長に対すると同様の要求事項について分会員全員の署名捺印のある要求書を校長に対して提出させ、文書による回答を要求させるなどして、各分会のスト態勢の確立に努め、一〇月二日、各分闘長をしてその交渉の結果を支部長あて報告させた。
オ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、九月二一日から二七日までの間に各支部ごとに管下組合員の全員集会を開き、一〇・八闘争の批准投票を行わしめ、九月二八日、投票用紙を右本部に提出した。
カ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月四日までに各支部ごとに管下各分会の始業時刻、授業終了時刻及び退庁時刻を掌握したうえ、一〇月八日当日の要求貫徹集会の実施計画を樹立し、一〇月五日に分闘長会を招集して当該実施計画を各分闘長に指示するとともに、一〇月七日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底せしめること及び同日分会員全員の前記休暇届をとりまとめて退校時に一括して校長に提出することを指示した。
キ 原告今村らは、一〇月八日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「43.10.8」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四三年一〇月八日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
2福高教組関係
(1) 本部役員であつた原告中村羔士の違法行為について
原告中村羔士は、一〇・八闘争当時、福高教組本部執行委員の地位にあつて、福高教組本部執行委員会の構成員で、かつ、特殊学校部の部長として県評議員会の構成員でもあつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 右原告は、昭和四三年五月上旬ころ開催された福高教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第九次賃金闘争方針に基づき、閣議決定期(一〇月ころを目途)に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 右原告は、五月三〇、三一日の両日開催された第二五回福高教組定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出したところ、右議案は可決成立した。
ウ 右原告は、九月一八日開催された福高教組本部執行委員会に出席し、一〇・八闘争の批准投票を九月二五日に行うこと及びその具体的方法を同委員会が決定することに関与した。
エ 右原告は、他の福高教組役員とともに、九月二七日、福高教組本部において右批准投票の開票を行い、賛成率が七一・二パーセントであることを公表した。
オ 右原告は、一〇月二日開催された中央闘争委員会に出席し、一〇・八闘争を実行することの再確認及びその具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、右一〇月三日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第二三号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
(ア) 一〇・八闘争を成功させるため、一〇月四日に分会会議を開き意思統一を図つたうえ、会議終了後に全員による校長交渉をもち、校長に対して闘いの正当性を認めさせ、不当な干渉、妨害をしない旨の確約書をとること。
(イ) 一〇月八日、公務員共闘統一行動として全組合員は勤務開始時刻から一時間の有給休暇届を学校ごとに一括して校長に提出のうえ、支部単位の要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は早朝の要求貫徹集会に参加し、当日の勤務終了時刻前一時間の有給休暇届を提出すること。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の二の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告小路ら」という。)は、一〇・八闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告平尾ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告小路らは、昭和四三年九月二五日福高教組本部の指示により、郡、市、支部単位の全員集会を開き、一〇・八闘争の批准投票を行わしめ、翌二六日、当該投票用紙を各支部ごとにとりまとめて右本部に提出した。
イ 原告平尾らは、一〇月二日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部の前記指示第二三号について討議し、同会が一〇・八闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
ウ 原告小路らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月四日、分会長に対し各支部ごとに分会会議を開き、前記指示第二三号の趣旨を徹底させるよう指示した。
エ 原告小路らは、そのころ、各分会長に対し、各分会において全員による校長交渉を行い、組合においてあらかじめ作成した要求決議書に全分会員連署のうえ、これを校長に提出し、次のような事項につき校長に文書による確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ア) 政府七人委員会、被告県教委、知事、人事委員会に対し、組合の要求を実現するよう打電する。
(イ) 組合の正当な闘いに対し、次のような不当な干渉、妨害をしない。
① 組合の闘いについての事前、事後の一切の調査については報告しない。
② 官憲、地域ボスの不当な介入を絶対に阻止する。
③ 組合の闘いに職務命令を出さない。
オ 原告小路らは、福高教組本部の指示に従い、分会長に対し、一〇月四日に全分会員の休暇届をとりまとめ、一〇月七日の終業時刻に校長に一括して提出するよう指示した。
カ 原告小路らは、一〇月八日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従等を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「43.10.8」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の二の組合役職等目録の「43.10.8」とある項に組合専従若しくは停職中と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四三年一〇月八日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね一時間職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(三) 七・一〇闘争における違法行為
1福教組関係
(1) 本部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告古賀らは、昭和四四年三月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第一〇次賃金闘争方針第一次草案に基づき、人事院勧告の完全実施をめぐる闘争の重要時点に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 原告古賀らは、三月中旬ころ、右方針に従い、三月五日、六日に開催された日教組中央委員会において決定された右ストライキの時期を七月中旬の人事院勧告時期とする日教組中央委員会の三月五、六日付決定に係る「第一次職場討議案」を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
ウ 原告古賀らは、五月二七日から二九日まで開催された福教組第三三回定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出したところ右議案は可決成立した。
エ 原告古賀らは、六月上旬ころ、「七・一〇全国統一実力行使について」と題する五月二九日付日教組第二次職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
オ 原告古賀らは、六月二五日開催された福教組本部執行委員会に出席し、七月一〇日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することの再確認及びその具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、更に、右六月二五日開催された支部長会において各支部長に対し福教組発第四三号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
(ア) 今次賃金闘争は、国会における大学臨時措置法案、学校教育法一部改正案、地方公務員定年制法案等の粉砕及び被告県教委の企図している学習指導要領伝達講習会の阻止等の目的と絡めて組まれるものであること。
(イ) 各支部は、全組合員の意思統一を図つてストへの完全突入態勢を整えるとともに、当該地域におけるオルグ活動を展開すること。
(ウ) 各分会は、分会員四名につき一枚の割合で闘争宣言文を墨書し、これを校区内の目抜きの場所に貼付すること。
(エ) 各支部は、全組合員の意思統一を図る目的をもつて、オルグ活動を強化し、その結果を七月五日までに福教組本部に報告すること。
(オ) 全組合員は、七月一〇日、前記の目的のもとに公務員共闘の全国統一ストライキとして勤務開始時刻から三〇分、市町村単位で開催される集会に参加すること。このため、七月九日、各分闘長は、全分会員の意思を集約し、これを校長に口頭で通告すること。
カ 原告古賀藤久は、六月二七日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告鳥越ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告鳥越らは、昭和四四年六月二五日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第四三号について討議し、同会が七・一〇闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
イ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、六月二六日以降各支部において分闘長会を開催し、各分闘長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに六月三〇日までに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第四三号の趣旨を徹底させるよう指示した。
ウ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分闘長に対し、七月二日から五日までの間に、当該地域に対するオルグ活動としてチラシを街頭宣伝及び戸別訪問により配布すること並びに闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で墨書させ、これを当該校区内の目抜きの場所に貼付することなどを指示し、もつて、各支部のスト態勢の確立に努めた。
エ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、七月一〇日当日の集会の実施計画を樹立した後、管下各分闘長に対し、七月九日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び七・一〇統一ストライキは全分会員の集約的な意思の表明として決行されるものである旨を校長に対して口頭で通告することを指示した。
オ 原告今村らは、七月一〇日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従を除くその余の原告らの行為について
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.7.10」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四四年七月一〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
2福高教組関係
(1) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の二の組合役職等目録の「44.7.10」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告黒田ら」という。)は、七・一〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告松本ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告松本らは、昭和四四年七月三日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、本部から提示された同日付指示第一三号について討議し、同会が七・一〇闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。右指示第一三号の概要は、次のとおりである。
(ア) 七・一〇闘争の目標は、第一に人事院高額勧告の要求、第二に国会における大学臨時措置法案及び学校教育法一部改正案等の粉砕、第三に沖縄の即時無条件全面返還の要求、第四に労働基本権の奪還、第五に反弾圧、亀井・吉久体制との対決、福岡県県立学校教育振興計画審議会(以下「県教審」という。)の設置反対とすること。
(イ) 全組合員は、七月一〇日、勤務開始時刻から三〇分間市町村単位に組織される公務員共闘の抗議、要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は、早朝の要求貫徹集会に参加し、当日の勤務終了時刻前に三〇分間の職務放棄を行うこと。
イ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、七月七日に分会会議を開いて全分会員に前記指示第一三号の趣旨を徹底させて意思統一を図つた後に全分会員連署による決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
ウ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、七月九日各校長に対し「大幅賃上げ、反動諸法案粉砕のため日教組中央闘争委員長の指令により七月一〇日早朝三〇分のストライキに参加する。」との文書通告を行うとともに、各分会長に対し放課後分会員全員による校長交渉を行い、次のような事項について校長から確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ア) 人事院に対する高額勧告の要求、政府及び衆参文教委員長に対する大学臨時措置法案反対、知事に対する県教審反対の打電をすること。
(イ) 本件ストに関する報告書を提出しないこと。
エ 原告黒田らは、七月一〇日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において分会長名をもつて右ウ(ア)記載内容と同様の打電を行うこと及び右ウ記載の確約を完了していない校長に対しては重ねて交渉を継続することを各分会長に指示した。
(2) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.7.10」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四四年七月一〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(四) 一一・一三闘争における違法行為
1福教組関係
(1) 本部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告古賀らは、昭和四四年三月上旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、公務員共闘の第一〇次賃金闘争方針第一次草案に基づき、一〇月あるいは一一月に予定されている官公労の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 原告古賀らは、五月二七日から二九日まで開催された第三三回福教組定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出したところ、右議案は可決成立した。
ウ 原告古賀らは、七月二五日及び九月一日、二日に開催された日教組全国戦術会議で決定された第三次及び第四次討議資料を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、ストライキ態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
エ 原告古賀らは、一〇月三日開催された福教組本部執行委員会に出席し、一一月一三日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することの再確認及びその具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、更に、右一〇月三日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第一六号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
(ア) 今次闘争は、人事院勧告の完全実施、安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還及び被告県教委のなした一〇・八闘争参加者に対する処分の撤回等の各要求を目的とするものであること。
(イ) 全組合員は、一一月一三日、公務員共闘の全国統一ストライキとして、当日の勤務開始時刻から一時間三〇分、市町村単位に行われる集会に参加すること。
(ウ) 公務員共闘の賃金要求が解決した場合にも、安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還の各要求を掲げて、三〇分のストライキを行うこと。
(エ) 今次闘争を成功させるための前段の闘争として、一〇・八処分撤回闘争を組織的に展開し、被告県教委、同出張所、地教委及び校長に対する交渉を強力に推進すること。
オ 原告古賀らは、右エ(エ)の方針に従い、被告県教委に対し九月二六日付処分撤回要求書を提出したのをかわきりに、九月中旬及び下旬の二次にわたり県下多数の組合員を動員して被告県教委の庁舎内に坐り込ませ、処分撤回を求める集団交渉を要求し、これらの処分撤回闘争を組織することにより、傘下組合員に対しストライキを理由とする処分の不当性及び本件闘争の正当性を宣伝し、もつて、本件のストライキ態勢の確立に努めた。
カ 原告古賀らは、一〇月一五日から一七日までの間、各支部単位に行われた批准投票において、各支部から送付された批准投票用紙を福教組本部に回収して開票し、その結果について賛成率七六パーセントであつた旨を公表した。
キ 原告古賀らは、「わたくしたちは、賃金要求を実現するため、一一月一三日に勤務開始時から勤務時間一時間三〇分カットにより要求貫徹集会に参加するという日教組第三七回臨時大会の決定を守ります。なお、このたたかいは、全労働者の安保条約廃棄、沖縄即時無条件全面返還の要求闘争と結合してたたかいます。」との決意表明書を作成し、各支部長を通じて各分会長に配布し、「権力や一部反動分子のスト切りくずし」に対する対策として各分会ごとに分会員全員をして署名捺印をさせるよう指示した。
ク 原告古賀藤久は、一一月一一日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告今村ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告鳥越ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告鳥越らは、昭和四四年一〇月三日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第一六号について討議し、同会が一一・一三闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
イ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月六日から一一日までの間に、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第一六号の趣旨を徹底させるよう指示した。
ウ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月一一日以降、各支部、分会段階において一〇・八処分撤回闘争を組織的に展開し、傘下組合員に対しストライキを理由とする処分の不当性及び本件闘争の正当性を教宣し、次のような行動をして各支部のスト態勢の確立に努めた。
(ア) 支部段階の闘争として、支部ごとに連日多数の組合員を動員して地教委及び県教育庁出張所長に対する集団交渉を要求し、「県教委に対し一〇・八処分を早急に撤回するよう具申すること」について文書による回答を一〇月二五日までの期限をつけて要求すること。
(イ) 当該期限までに満足な回答をしない地教委及び出張所長に対しては、引き続き徹底した交渉を強化し、一一月にはいつてからは地教委、出張所長、指導主事の学校訪問を拒否する戦術その他当該支部独自の集団的な抗議行動を各々展開すること。
エ 原告今村らは、管下各分会に対し、分会長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、校長に対し次の要求事項について文書による回答を一〇月二五日までの期限をつけて要求させた。
(ア) 被告県教委に対して、一〇・八闘争処分を早急に撤回するよう上申すること。
(イ) 県人事委員会に対して、早急に一〇・八闘争に対する処分事案の一括口頭公開審理を開くよう要請すること。
更に、当該期限までに満足な回答をしない校長に対しては、引き続き交渉を強力に推し進め、一一月に入つてからは分会長を通じて分会員全員による無言闘争等の抗議行動を行わせた。
オ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月一五日から一七日までの間に、各支部ごとに傘下組合員の全員集会を開催し、一一・一三闘争の批准投票を行わしめ、投票用紙を一〇月一七日に右本部に提出した。
カ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二一日の勤務時間終了後、各支部ごとに、一一・一三スト宣言及び反安保、沖縄闘争のための全員集会を総評、公務員共闘の全国統一行動として地域公務員共闘と共同して開催し、右集会において参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図るとともに、被告県教委に対する一〇・八闘争処分撤回の要求をなすことを提案して全員の賛同を促し、被告県教委に対し同趣旨の電報を打ち、更に、集会終了後、組合員多数をひきいてデモ行進し、スト態勢の確立に努めた。
キ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二一日から二五日にかけて、各支部ごとに傘下組合員をして一一・一三闘争に関する宣伝文書を街頭で配布させるとともに、闘争宣言文を各校区内の目抜きの場所に貼付させるなどして、スト態勢の確立に努めた。
ク 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一〇月二五日から三〇日までの間に、各支部ごとに分会長会を開催し、各分会長に対し、各分会組織のスト態勢を点検し、前記(1)キの決意表明書に署名捺印させるよう指示して、スト態勢の整備に努めた。
ケ 原告今村らは、福教組本部の指示に従い、一一月一〇日以降各支部書記局に常駐体制をとり、一一月一二日、各地教委に対し文書によるスト通告を行うとともに、管下各分会長に対し分会会議を開催して全組合員に重ねてスト実施計画を徹底させたのち、校長に文書でスト通告を行うよう指示した。
コ 原告今村らは、一一月一三日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置し、各組合員のスト参加状況を点検させて脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.11.13」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四四年一一月一三日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね一時間三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
2福高教組関係
(1) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の二の組合役職等目録の「44.11.13」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告黒田ら」という。)は、一一・一三闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告松本ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告松本らは、昭和四四年一〇月一一日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された同日付指示第一九号について討議し、同会が一一・一三闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。右指示第一九号の概要は、次のとおりであつた。
(ア) 人事院勧告の完全実施、沖縄の即時無条件全面返還、安保条約の廃棄及び労働基本権の奪還(ストライキの常設化)を目的として、一一月一三日に一時間三〇分のストライキを行うこと。
(イ) スト当日までの前段階闘争として、日常的に一〇月下旬には「沖縄を教える運動」、一一月上旬には「安保条約反対、沖縄の即時無条件全面返還、非核武装宣言を要求する三〇〇〇万署名運動」に積極的に参加すること。
(ウ) ストライキの正当性を確保するため、一〇・八闘争処分撤回要求闘争を被告県教委及び各校長に対して展開すること。
イ 原告黒田らは、一〇月一六日及び一七日、福高教組本部の指示により、各支部単位の全員集会を開いて一一・一三闘争の批准投票を行わしめ、一〇月一八日、当該投票用紙を各支部ごとにとりまとめて右本部に提出した。
ウ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月中旬以降連日のように管下各分会に対し、分会長を通じて分会員全員による校長交渉を行わしめ、校長に対し次に述べるような要求事項について文書による確約を要求するよう指示して、各分会のスト態勢の確立に努めた。
(ア) 被告県教委あてに一〇・八闘争処分撤回具申書を提出すること。
(イ) スト当日に職務命令を出さないこと。
(ウ) 当日のスト実施状況等についての報告書を提出しないこと。
エ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一〇月二一日の勤務時間終了後、各支部ごとに一一・一三スト宣言及び反安保、沖縄闘争のための全員集会を総評、公務員共闘の全国統一行動として開催し、参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図つた。
オ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、組合員全員に対し、一〇月二〇日(月曜日)から二五日(土曜日)に至る一週間を「沖縄を教える週間」として、胸に安保廃棄、沖縄返還の文字を記載したプレートをつけ、住民に対し「安保条約反対、沖縄の即時無条件全面返還、非核武装宣言を要求する三〇〇〇万署名運動」を展開するよう指示し、もつて、生徒、父母及び一般住民に対して本件闘争の要求の正当性を宣伝して、その浸透を図るとともに全組合員の意思の高揚を図り、スト態勢の強化に努めた。
カ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一一月四日、管下各分会長に対し、全分会員連署によるスト突入の決意表明書を作成すること及び脱落可能性のある組合員に対しては個別的説得を強化することを指示し、原告松本らは、管下各分会から集約した右決意表明書を一一月一一日の支部長会に持参して右本部に提出した。
キ 原告黒田らは、福高教組本部の指示に従い、一一月七日、管下各分会長に対し、分会員全員による校長交渉を行い、次に述べるような事項を要求するよう指示して、各分会におけるスト態勢の強化に努めた。
(ア) 政府、知事、被告県教委に対し、人事院勧告の完全実施等の組合の要求を実現するよう打電すること。
(イ) 次の事項について、誓約書を作成すること。
① ストに対して介入しない、させない。
② 職務命令を出さない。
③ 報告書を提出しない。
ク 原告黒田らは、一一月一三日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(2) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「44.11.13」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四四年一一月一三日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね一時間三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(五) 五・二〇闘争における違法行為
1福教組関係
(1) 本部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告古賀らは、昭和四六年二月下旬ころ開催された福教組本部執行委員会に出席し、日教組が「(公務員共闘)七一年賃金闘争」の一環として、いわゆる教職特別措置法案の成立阻止などを目的として五月中旬に企図している早朝三〇分の全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 原告古賀らは、三月二日開催された第二一八回評議員会において、右方針に従い、争議行為を行う旨の議案を提出したところ、右議案は可決成立した。
ウ 原告古賀らは、右方針に従い、教職特別措置法案に関する日教組第四次職場討議資料及び日教組教育新聞号外を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
エ 原告古賀らは、五月六日に開催された福教組本部執行委員会に出席し、五・二〇闘争の具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、更に、右五月六日開催された支部長会において各支部長に対し、指示第三八号と題する文書をもつて次のとおり指示した。
(ア) 本件闘争は、今国会に提出されているいわゆる教職特別措置法案の成立を阻止することなどを目的として、「大幅賃上げ」等を要求する公務員共闘の全国統一ストライキと呼応して組まれるものであること。
(イ) 全組合員は、五月二〇日、日教組指令に基づき早朝三〇分の勤務時間カットにより行われる集会に参加すること。
オ 原告古賀藤久は、五月一九日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告金丸ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告金丸らは、昭和四六年五月六日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部から提示された前記指示第三八号について討議し、同会が五・二〇闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
イ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、五月七日以降、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して本件闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、直ちに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第三八号の趣旨を徹底させるように指示した。
ウ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分会長に対し、父母及び一般大衆に対する宣伝活動として、右本部が準備する情宣チラシを各分会において計画的に配付すること及び闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で作成し当該校区内の目抜きの場所に掲示することなどを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
エ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、五月二〇日当日の集会の実施計画を樹立したのち、管下各分会長に対し、五月一九日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び五・二〇統一ストライキは全分会員の集約的意思の表明として決行されるものである旨を校長に対して口頭で通告することを指示した。
オ 原告大村らは、五月二〇日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の一の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.5.20」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四六年五月二〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
2福高教組関係
(1) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の二の組合役職等目録の「46.5.20」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告北川ら」という。)は、五・二〇闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告吉武ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告吉武らは、昭和四六年五月七日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された「五月闘争の推進について」と題する同日付指示第一号について討議し、同会が五・二〇闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。右指示第一号の概要は、次のとおりであつた。
(ア) 教職特別措置法案は、「教職調整額」の支給とひきかえに「無定量勤務の強要」を意図するものであり、本件闘争は、かかる「悪法粉砕」などを目的として公務員共闘の全国統一ストライキと呼応して組まれるものであること。
(イ) 「労働者があるところに団結があり労働者があるところにストライキがあり」、スト権確立への道は「当該労働者のストライキのつみかさね」にあること。
(ウ) 「亀井県政第二期に対する闘いは、まず当面する五・二〇ストを整然と打ち抜くことをはじめとして組織の団結力を示すことから開始」するものであること。
(エ) 右方針に基づき、支部長・分会長は、五・二〇スト突入態勢を確立すること。
イ 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、分会会議を開き全分会員に前記指示第一号の趣旨を徹底させて意思統一を図つたのち、五月一七日に全分会員連署によるスト突入決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
ウ 原告北川らは、五月二〇日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置し、各組合員のスト参加状況を点検させて脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において次のことを決議し、それぞれに要求打電を行うよう各分会長に指示した。
(ア) 人事院総裁及び文部大臣に対し、法案の不当性を追及する抗議と、超勤手当制度確立及び四月一日より大幅賃上げの要求をすること。
(イ) 国会議員(与野党文教委員)に対し、無定量勤務を強要する法案内容を修正し、超勤手当制度を確立する要請をすること。
(2) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の二の原告及び処分目録「勤務校及び職名」欄の「46.5.20」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四六年五月二〇日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(六) 七・一五闘争における原告らの違法行為
1福教組関係
(1) 本部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に「本部執行委員長」、「本部書記長」、「本部書記次長」、「本部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告古賀ら」という。)は、七・一五闘争当時右各組合役職にあり、福教組本部執行委員会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告古賀らは、昭和四五年一〇月ころから「労働基本権を確立し、人事院勧告体制を打ち破つて、ストライキを背景にした政府との団体交渉によつて賃金を決定する」ことが「七一年賃金闘争」の課題である旨の日教組第一次職場討議資料を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付しスト態勢の準備に努めるとともに、一一月中旬開催された福教組本部執行委員会に出席し、日教組が翌年七月中旬に企図している公務員共闘としての全国統一ストライキに積極的に参加する方針を同委員会が決定することに関与した。
イ 原告古賀らは、右方針に従い、「七一年賃金闘争」の山場を昭和四六年七月中旬に組織する公務員共闘としての全国統一ストライキにおくことについての日教組第二次及び第三次職場討議案を福教組傘下の各組合員に配布して下部討議に付し、スト態勢整備のための組合員の意思の結集を図つた。
ウ 原告古賀らは、三月二日開催された第二一八回評議員会及び七月三日から五日まで開催された福教組第三五回定期大会において、右方針に従い争議行為を行う旨の議案を提出したところ、右議案はそれぞれ可決成立した。
エ 原告古賀らは、五月二二日及び七月七日開催された福教組本部執行委員会に出席し、七月一五日の公務員共闘の全国統一ストライキに参加することの再確認及びその具体的戦術の討議、決定を同委員会がすることに関与し、更に、右七月七日開催された支部長会において各支部長に対し、同日付指示第一号をもつて次のとおり指示した。
(ア) 本件闘争は、五・二〇ストの発展として、公務員共闘の第二波統一ストライキとして組織され、これを背景とする対政府・人事院交渉によつて賃金大幅引き上げ等の要求の実現を図ることを目的とするものであること。
(イ) 全組合員は、七月一五日、右目的の下に公務員共闘の全国統一ストライキとして勤務開始時刻から三〇分市町村単位に行われる要求貫徹集会に参加すること。
オ 原告古賀藤久は、七月一四日、日教組委員長名をもつて、かねて指示したとおり本件争議行為を行うことを支部長、分会長を通じて全組合員に指令した。
(2) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の一の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」、「支部執行委員」と記載のある原告ら(以下「原告大村ら」という。)は、七・一五闘争当時右各組合役職にあり、定められた福教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告金丸ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告金丸らは、昭和四六年七月七日、原告古賀藤久の招集によつて開催された支部長会に出席し、福教組本部の前記指示第一号について討議し、同会が七・一五闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。
イ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月八日以降、各支部において分会長会を開催し、各分会長に対して右闘争の意義及び具体的戦術について説明するとともに、直ちに分会会議を開催して各組合員に対して前記指示第一号の趣旨を徹底させるように指示した。
ウ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、各支部ごとに管下各分会長に対し、父母、一般大衆に対する宣伝活動として、情宣チラシを各分会において計画的に配布すること及び闘争宣言文を分会員四名につき一枚の割合で作成し当該校区内の目抜きの場所に掲示することなどを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
エ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月一二日の勤務時間終了後、各支部ごとに全員集会を公務員共闘の全国統一行動として開催し、意思の結集を図つた。
オ 原告大村らは、福教組本部の指示に従い、七月一五日当日の集会の実施計画を樹立したのち、管下各分会長に対し、七月一四日に分会会議を開いて全分会員に当該実施計画を周知徹底させること及び七・一五統一ストライキは全分会員の集約的意思の表明として決行されるものである旨を校長に対して口頭で通告することを指示した。
カ 原告大村らは、七月一五日のスト当日、福教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して各組合員のスト参加状況を点検させ、脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告した。
(3) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の一の原告及び処分目録の「勤務校及び職名」欄の「46.7.15」とある項に記載のある原告らのうち別紙第四の一の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に組合専従と記載されている者を除くその余の原告らは、いずれも昭和四六年七月一五日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻からおおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
2福高教組関係
(1) 支部役員であつた原告らの違法行為について
別紙第四の二の組合役職等目録の「46.7.15」とある項に「支部長」、「副支部長」、「支部書記長」と記載のある原告ら(以下「原告北川ら」という。)は、七・一五闘争当時右各組合役職にあり、定められた福高教組各支部の職務を担当し、そのうち「支部長」と記載のある原告ら(以下「原告吉武ら」という。)は支部長会の構成員であつたが、右闘争に際し、次のような行為をしたことは当事者間に争いがない。
ア 原告吉武らは、昭和四六年七月九日、福高教組本部の招集によつて開催された支部長会に出席し、右本部から提示された「七・一五統一ストライキについて」と題する同日付指示第一三号について討議し、同会が七・一五闘争の具体的戦術を協議、決定することに関与した。右指示第一三号の概要は、次のとおりであつた。
(ア) 本件闘争は、「七〇年代の本格賃金闘争」の一つの「ステップ」として人事院・政府に対し「団交」とストライキをもつて賃上げをかちとろうとする闘いであること。このことは、中教審路線に基づく「五段階給与」のねらいをうち破つていく闘いにもなること。
(イ) 「私たち教育労働者は、団結権はもとよりのこと、団交権もスト権ももつている」こと。
(ウ) 七月一五日、全組合員は勤務開始時刻から三〇分、市町村単位に行われる公務員共闘の要求貫徹集会に参加すること。この場合、夜間定時制高校の組合員は、勤務終了時刻前に三〇分の職務放棄を行うこと。
イ 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、分会会議を開き全分会員に前記指示第一三号の趣旨を徹底させて意思統一を図つたのち、七月一二日に全分会員連署による決意表明書を集約するよう指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
ウ 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、七月一二日の勤務時間終了後、各支部ごとに全員集会を公務員共闘の全国統一行動として開催し、参加者全員によるスト宣言を発せしめて意思の結集を図つた。
エ 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、管下各分会長に対し、当該地域に対する教宣活動として、闘争宣言文を各分会員につき三枚の割合で街頭に掲示することを指示し、各支部のスト態勢の確立に努めた。
オ 原告北川らは、福高教組本部の指示に従い、七月一二日、各校長に対し「大幅賃上げを要求して、七月一五日に三〇分未満のストライキを行う。」との文書通告を行うとともに、各分会長に対し放課後分会員全員による校長交渉を行い、次のような事項について校長から確約を求めることを指示し、各分会におけるスト態勢の確立に努めた。
(ア) 七月一五日のストライキの正当性を認めること。
(イ) ストライキに対する不当な介入、干渉をしないこと。
カ 原告北川らは、七月一五日のスト当日、福高教組本部の指示により、各支部ごとに設定した点検班を管下各分会に配置して、各組合員のスト参加状況を点検させて脱落者の防止と説得に当たらせるとともに、地域公務員共闘と共同して要求貫徹集会を開催し、当日の参加状況を右本部に報告し、更に、右集会において分会長名をもつて給与担当大臣等へあてて「大幅賃金引上げ」等の打電を行うこと及び前項記載の確約を完了していない校長に対しては重ねて交渉を継続することを各分会長に指示した。
(2) 組合専従を除くその余の原告らの違法行為について
別紙第一の二の原告及び処分目録の「勤務校及び職名」欄の「46.7.15」とある項に記載のある原告らは、いずれも昭和四六年七月一五日校長の承認を得ることなく、当日の勤務開始時刻から(夜間定時制高校にあつては勤務終了時刻前)おおむね三〇分職場を離脱して、争議行為に参加したことは当事者間に争いがない。
(七) 原告らの前記各行為は、地公法三三条、三五条(ただし、組合専従及び停職中の原告らを除く。)、三七条一項に違反し、同法二九条一項一号、二号(ただし、組合専従及び停職中の原告らを除く。)、三号の懲戒事由に該当するというべきである。
三原告らの主張に対する判断
(一) 地公法三七条一項が憲法二八条に違反するとの主張について
原告らは、一般職に属する非現業地方公務員について争議行為の全面一律禁止を定めた地公法三七条一項の規定が労働基本権を保障した憲法二八条に違反する旨主張するが、しかし、この点については、既に最高裁判所昭和五一年五月二一日大法廷判決(刑集三〇巻五号一一七八頁、「以下五・二一判決」という。)が、さきに非現業国家公務員の争議行為を全面一律に禁止した国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項の規定を憲法二八条に違反するものではないとした最高裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決(刑集二七巻四号五四七頁、以下「四・二五判決」という。)の法理を敷衍して、非現業地方公務員について、(1)地方公務員が地方公共団体の住民全体の奉仕者として実質的にはこれに対して労務提供義務を負うという特殊な地位を有し、かつ、その労務の内容は公務の遂行すなわち直接公共の利益のための活動の一環をなすという公共的性質を有するものであつて、地方公務員が争議行為に及ぶことは、右のようなその地位の特殊性と職務の公共性と相容れず、また、そのために公務の停廃を生じ、地方住民全体ないし国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあること(地方公務員の地位の特殊性と職務の公共性)、(2)地方公務員の勤務条件が法律及び地方公共団体の議会の制定する条例によつて定められ、また、その給与が地方公共団体の税収等の財源によつてまかなわれるところから専ら当該地方公共団体における政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮によつて決定されなければならず、しかもその決定は議会の民主的な手続によつて決定されなければならないのであつて、私企業における労働者の場合のように団体交渉による労働条件の決定という方式がこの場合には当然には妥当せず、争議権も団体交渉の裏づけとしての本来の機能を発揮する余地に乏しく、かえつて議会における民主的手続によつてなされるべき勤務条件の決定に対して不当な圧力を加え、これをゆがめるおそれがあること(勤務条件法定主義、議会民主制)など憲法上の他の基本原理から地方公務員の労働基本権が合憲的に制約されることを前提としたうえ、(3)右制約に見合う代償措置として、地方公務員についても、(ア)地公法上、国家公務員の場合とほぼ同様な勤務条件に関する利益を保障する定めがなされている(給与について地公法二四条ないし二六条等)ほか、(イ)国家公務員の場合の人事院制度に対応するものとして、これと類似の性格をもち、かつ、これと同様の、又はこれに近い職務権限を有する人事委員会又は公平委員会の制度(同法七条ないし一二条)が設けられていることを挙げ、以上の諸点を総合的論拠として、非現業地方公務員の争議行為を全面一律に禁止した地公法三七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことを明確に判示しているところであつて、その後も更に最高裁判所昭和五二年五月四日大法廷判決(刑集三一巻三号一八二頁、以下「五・四判決」という。)同裁判所昭和五三年七月一八日第三小法廷判決(民集三二巻五号一〇三〇頁)、同裁判所昭和五六年四月九日第一小法廷判決(民集三五巻三号四七七頁)が前記四・二五、五・二一大法廷判決の趣旨に則り、現業国家公務員、公社その他の公共企業体職員の争議行為を全面一律に禁止した公共企業体等労働関係法一七条一項の規定について、これを合憲とする判断を相次いで示しており、これら一連の最高裁判所判決の趨勢に照らすと、公務員等の争議行為を全面一律に禁止する法律の規定を合憲とする判断はいまや判例として確立し、定着するに至つていると見るのが相当である。
しかる以上、審級制度を採る現行訴訟制度の下においては、最高裁判所の有する判例統一機能及び法的安定性を軽視することはできず、下級裁判所としては、最高裁判所の判例の趣旨に明らかに不合理な点があるなど特段の理由がない限り、同種の事案については右判例を尊重し、これに従わざるをえないというのが、審級制度から導き出される要請であると解すべきである。
原告らは、前記一連の最高裁判所大法廷判決を批判し、その採る公務員等の労働基本権に対する制約理論は、公務員等の地位の特殊性と職務の公共性、勤務条件法定主義、財政民主主義(議会民主制)について硬直した考えに立脚したもので、公務員等の労使関係についての国際的動向にも反しており、到底公務員等の労働基本権を制約する原理として十分な論拠たりえないし、また、最高裁判所の説くところの代償措置の制度も当事者の参加を認める調停、仲裁手続が欠如した不備なものであつて、公務員等の労働基本権に対する制約を合憲たらしめる制度としては極めて不十分である旨主張するが、これらの主張はそのほとんどが前記一連の最高裁判所の判例の形成過程においてこれに対する批判として論じられ検討されて来た問題であり、未だ右各判例の論拠を覆滅するに至る程の議論とは認め難い。したがつて、下級審たる当裁判所において、右判例を踏襲しないこととすべき特段の理由に当たるものとはなし難く、また、他に原告らの主張(その詳細は昭和五九年一二月四日付原告らの最終準備書面に記載)を仔細に検討しても右特段の理由の存することを見出しえない。
したがつて、地公法三七条一項の規定が憲法二八条に違反する旨の原告らの主張は採用できない。
(二) 地公法三七条一項が憲法九八条二項に違反するとの主張について
原告らは、地公法三七条一項はILO八七号条約やILOの諸機関の見解に反し、ひいては憲法九八条二項に違反する旨主張しているので、この点について判断する。
<証拠>を総合すれば、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
ILOはこれまでに労働基本権に関する条約として、一九四八年結社の自由及び団結権の保護に関する条約(ILO八七号条約)を採択して以来、一九四九年にILO九八号条約を、一九五七年にILO一〇五号条約を、一九七八年にILO一五一号条約をそれぞれ、採択し、また、そのほかにも多数の勧告を採択したり、各委員会等において多数の報告ないし決議等をなし、ユネスコとの合同委員会における最終報告をまとめているが、右諸活動によりILOは八七号条約、九八号条約との関連において公務員の労働基本権につき、現在大要次のような見解を有している。
1すべての労働者について全面的にストライキを禁止することは、組合員の利益を増進しかつ擁護するために(八七号条約一〇条)労働組合が活用しうる手段とその活動を組織する権利(同条約三条)に対する重大な制約となり、結社の自由の諸原則に違反し、ストライキを全面的に禁止する国内法令は同条約八条二項に違反するおそれがある(例えば、一九八三年条約勧告適用専門家委員会報告二〇五項)。
2ストライキの禁止は公権力の機関として行為する公務員や国民全体若しくはその一部の生命、個人的安全ないし健康に対してその中断が危険をもたらす業務(不可欠業務)に限定すべきである。そしてこの場合でもストライキを禁止される労働者の利益を保護するために、このような制約が適切公平かつ迅速な調停、仲裁手続による代償措置を伴ない、その手続においては、当事者があらゆる段階で参画でき、その裁定がすべてのケースにおいて両当事者を拘束し、裁定がいつたん下された場合には全面的かつ迅速に実施されなければならない(例えば、結社の自由委員会第二二二次報告一六四項、一九八三年条約勧告適用専門家委員会報告二一四項)。
3公務員である教員についても、給与及び勤務条件は組合と当局の交渉の過程を経て決定されるものとし、その交渉あるいは勤務条件から生じた紛争の処理のため適切な合同機構が設けられるものとし、交渉が決裂した場合には、組合は正当な利益を守るために通常他の団体に開かれているような他の手段をとる権利を有するものとする(ILOユネスコ教員の地位に関する勧告八二ないし八四項)。
以上のようなILOの諸見解の趣旨に照らすと地公法三七条一項がこれにそわないことがうかがわれる。
しかし、憲法九八条二項によつて、わが国の国内法として法源性を認められるのは、「締結した条約」及び「確立された国際法規」であり、ここにいう「確立された国際法規」とは国際社会一般に承認され、実行されている不文の慣習国際法を指し、未批准の条約や勧告、報告等は、右の「締結した条約」に当たらないことはもとより、「確立された国際法規」にも該当しないと解すべきである。したがつてILO八七号条約は九八号条約とともにわが国において批准され、憲法九八条二項にいう「締結した条約」として国内法源性を有することは明らかであるが、右八七号条約はもともとストライキ権とは関係がないものとして採択され、批准されたものであり、九八号条約も仏文の正典によれば同条約六条の公務員の範囲につき特段の限定が付されていないのである。たしかにILO諸機関の前記見解は右各条約の解釈に関する一つの公式見解となつていることは否めないとしても、それはあくまで政府に対し、ILO条約の趣旨にそつた国内法の整備を求めているに止まるものであつて、条約の解釈をめぐる疑義紛争について下される国際司法裁判所の最終判断(ILO憲章三七条一項、二項)とは異なり条約を解釈適用する際の法的拘束力ある基準として、法源性を有するに至つているとまでは解されない。
してみると右各条約殊に八七号条約に関するILO諸機関の前記見解に法源性を認め、これを前提として地公法三七条一項が憲法九八条二項に違反するとする原告らの主張は採用できない。
(三) 教職員の争議行為が地公法三七条一項で禁止する争議行為に当たらないとの主張について
原告らは、地公法三七条一項につき、同条項は憲法上特に禁止できる特定の公務員の特定の争議行為のみを対象とするもので、それ以外の公務員の争議行為は禁止の対象とはしていないとの限定解釈を施すべきであるところ、教職員は、その職務の特殊性から争議行為による一時的な授業の遅れも、各教員の必要な調整により年間教育への影響がほとんどない状態にすることができ、また、日常の教育活動への支障もほとんどなく、その争議行為が国民の生存権的利益や国民生活について重大な障害を招くおそれはないので禁止の対象となるものではない旨主張するが、前記五・二一判決はまさに教職員の争議行為に関する事案について判断を示したものであり、同判決をはじめ四・二五判決、五・四判決の趣旨からすると、地方・国家、現業・非現業を問わず、公務員はすべてその職種や争議行為の態様いかんにかかわりなく全面一律に争議行為を禁止され、そこには原告ら主張のような限定解釈を施すべき余地のないことは明白である。
したがつて、地公法三七条一項は、当然非現業地方公務員である教職員を含め全面一律にその争議行為を禁止しているものと解すべきであるから、原告らの右主張は採用できない。
(四) 代償措置が機能を喪失したか真に十分に機能していない状態にあつたとの主張について
争議権制約の代償措置は、争議行為を禁止されている公務員の利益を現実的に保障しようとする制度であつて、公務員の争議行為の禁止が違憲とされないための論理的前提をなすものというべきところ、前記五・二一判決の判示するように、非現業地方公務員に対する現行の代償措置は、制度上労働基本権の制限に見合う代償措置としての一般的要件を満たしているものと認められ、その限りにおいて地方公務員の争議行為を全面一律に禁止した地公法三七条一項を直ちに憲法二八条に違反するものとすることはできない。ただ右の代償措置は単に制度上一般的要件を満たしているというだけではなく、現実にも労働基本権制約の代償措置として十全とはいえないまでも、少くともそれ相応の機能を果しているといえることが必要であると解されるし、現に前記五・二一判決において二裁判官の補足意見が引用する四・二五判決の追加補足意見も指摘するように、その代償措置が本来の機能を果さず、実際上画餅にひとしいとみられる事態を生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して相当と認められる範囲を逸脱しない手段態様で争議行為に及んだとしても、これを直ちに違法視し、これに対して地公法三七条一項を適用して不利益制裁を課することは、憲法二八条との関係で適用違憲の問題を生じることが有りうると解される。
ところで、地方公務員の給与の引上げに関し、人事委員会は人事院の勧告とは無関係に独自の勧告を出すという仕組みになつておらず、人事院の勧告が出た後ほぼそれと同内容の勧告が人事委員会から出され、これに応じて条例が制定されるという現状になつていることは当裁判所に顕著であるので、以下本件各争議行為がおこなわれた当時までの人事院及び人事委員会の勧告運用の実態を眺めてみるに、<証拠>を総合すれば、人事院は、昭和二九年から昭和三四年までの間は基本給与の改善勧告を全くしなかつたが、昭和三五年からは毎年基本給与の改善勧告が出されるようになり勧告の実施時期を除き、勧告どおり基本給与の改定がなされるようになり、本件各争議の行われた昭和四六年に至つていること、また、勧告の実施時期についても、昭和三五年は人事院の五月実施という勧告に対し、一〇月実施であつたが、昭和三九年には九月、昭和四二年には八月、昭和四三年には七月、昭和四四年には六月と順次繰り上げ実施されるようになり、昭和四五年には勧告どおり五月に完全実施されるに至つたこと、県立学校の教職員及び市町村立学校の県費負担教職員については各都道府県の人事委員会が人事院とほぼ同内容の勧告をし、これが人事院勧告と同様な状況で実施され、福岡県もその例外ではないことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実に従えば、本件各争議行為当時に至るまでの人事院等の勧告による公務員給与引上げの状況は、実施時期の点において勧告どおりの完全実施が行われず多少の遅れを見たものの、引上率の点では勧告どおりの実施が行われているのであつて、必ずしも十全とはいえないまでも代償措置としてそれなりの機能は一応これを果しているものということができる。加うるに代償措置の制度としては、右の人事院等の給与引上げの勧告制度のみでなく、そのほかにも地方公務員は前述のように地公法上身分、任免、服務その他の勤務条件についてその利益保障を享受しているのであつて、この点も代償措置制度の一環をなすものであることを併せ考えると、現行の代償措置制度は本件各争議行為当時実際の運用上も相応の機能を果しているものといいうる。
原告らは現行の代償措置制度が地方公務員の争議権制約に見合う措置として実際の運用上その機能を全く喪失しているか不完全にしか機能していないとして、その機能回復を目的としてなされた本件各争議行為は違法でない旨主張するが、右主張はその前提を欠き失当といわなければならない。
(五) 本件各処分が懲戒権の濫用であるとの主張について
原告らは、本件各処分が懲戒権の濫用に該当する旨主張するので、この点につき判断する。
1地方公務員に懲戒事由がある場合に、懲戒権者が当該公務員を懲戒処分に付すべきかどうか、また、懲戒処分としていかなる種類の処分を選択すべきかを決するについては公正でなければならない(地公法二七条)ことはもちろんであるが、懲戒権者は懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、諸般の事情を考慮して、これを決定できるのであつて、それらは懲戒権者の裁量に任されているものと解される。したがつて、右の裁量は恣意にわたることをえないことは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして違法とならないものというべきである(最高裁判所昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決、民集三一巻七号一一〇一頁参照)。
2(1) これを本件についてみるに、本件各争議行為は前記認定のごとく、いずれも人事院勧告の完全実施等を目的として公務員共闘が行う全国的な統一賃金闘争に日教組が参加する形で行われたもので、原告らの行つた職場離脱の時間はおおむね三〇分から一時間三〇分という比較的短時間であり、また、原告らにおいて職務放棄による授業への影響を可及的最少限に止めるよう配慮した形跡がうかがわれないわけではないが、しかし、およそ教職にある公務員が明らかに法で禁止されている争議行為に及ぶということ自体の児童、生徒や父兄等に与える心理的影響には決して無視できないものがある。しかも本件は当局側において事前に争議行為に及ばないよう再三にわたり厳重に指導、警告しているのにもかかわらず、あえてこれを省みず争議行為に突入したものであり、そのほか一〇・二六ストを除く本件各争議行為は毎回約二万人を動員して計画的、組織的にほぼ全県にわたつて展開されたもので社会に与えた影響の少なからぬことを考慮すると原告らの責任は重大であるというべきであつて、その指導的役割を担つた者はもとより、単純参加者についてもこれを懲戒処分に付すことが著しく不相当であるとは到底認め難い。殊に一〇・二六ストの参加者は教頭や定時制主事として校長を助けて教職員を指導すべき職責を有し、かつ、福高教組の組合員となることができなかつたにもかかわらず敢えて争議行為に参加したものであつて、その責任は極めて重大であり、これを懲戒処分に付すことは当然というべきである。
(2) <証拠>並びに本件各処分の状況を総合すれば、被告県教委は本件各処分に際し、単純参加一回につき戒告、二回につき減給一月を原則とし、離脱時間の短いことを軽減事由とし、組合役職者等指導的地位にあること(本部役員、支部三役)を加重事由としてこれに修正を加える懲戒基準の下に処分を行つたが、本件各処分を受けた原告らのうち単純参加者としての最高処分は減給一月で、組合役職者としてのそれは停職六月であり、従来の処分、他の任命権者の処分、他府県の処分に比しかなり重いといえる面の存すること、しかもこれらの処分にはすべて昇給延伸を伴うものであること、また、以前の争議行為においては処分の対象の範囲が主に指導的立場の組合幹部に限定してなされ、本件のように単純参加者を含めた大量処分がなされることは異例に属することが認められるが、しかし、本件各争議行為は前述のように計画的、組織的に傘下組合員である多数の教職員を動員して全県にわたり一斉に統一実力行使に突入したもので、その回数、規模、態様等において大々的なものがあり、児童、生徒や父兄延いては地域社会に与えた影響の少からぬことを考慮すると、本件各処分は未だ社会観念上著しく裁量権の範囲を逸脱し妥当性を欠いた苛酷な処分であるともいい難い。その他、本件全証拠によるも、原告らの主張するように被告県教委が本件各処分をするに際し、福教組及び福高教組の組織を破壊する意図を有していたという事実も認めることはできない。
以上のとおり本件各処分を以て懲戒権を濫用した違法な処分であるとすることはできず、原告らの右主張も採用できない。
四よつて、被告県教委のなした本件各処分には違法な点がなく、右各処分の取消しを求める原告らの本訴各請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤浦照生 裁判官草野芳郎 裁判官片岡勝行は、転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官藤浦照生)
別紙第一の一の原告及び処分目録は別冊(三分冊)
別紙第一の二の原告及び処分目録は別冊
別紙第二処分日目録
一 42.10.26闘争に対する処分発令日
全原告とも昭和四三年二月二七日
二 43.10.8闘争に対する処分発令日
(一) 昭和四四年二月二二日
1 別紙第一の一の関係<省略>
2 別紙第一の二の関係<省略>
(二) 昭和四四年六月五日
1 別紙第一の一の関係<省略>
2 別紙第一の二の関係<省略>
(三) 昭和四四年一一月一日
別紙第一の一の関係<省略>
(四) 昭和四三年一二月一四日
前記(一)ないし(三)を除くその余の原告
三 44.7.10及び44.11.13闘争に対する処分発令日
(一) 昭和四五年二月一九日
1 別紙第一の一の関係<省略>
2 別紙第一の二の関係<省略>
(二) 昭和四五年一月一四日
前記(一)を除くその余の原告
四 46.5.20及び46.7.15闘争に対する処分発令日
全原告とも昭和四六年八月二八日
別紙第三市教委関係原告目録
一 闘争時の勤務校が福岡市立であつた場合の懲戒処分についての原告ら
二 闘争時の勤務校が粕屋郡志賀町立にあつた場合の懲戒処分についての原告ら
三 闘争時の勤務校が早良郡早良町立であつた場合の懲戒処分についての原告ら
別紙第四の一組合役職等目録
<省略>